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第30話
お兄さんと二人黙ったままで、再び内廊下を病院に向かって歩く。
「福木君…。」
お兄さんが前を歩き続けながら、僕に声をかけてきた。
「はい?」
「山野君の匂いが今どうなっているのか、私達にはわからない。まったく匂わないからね。」
「あ、はい。」
「一応、本人が効くと信じている薬を飲ませてあるので、多分落ち着いていると思うのだけれど、それが君が感じていると思われる匂いにも効くかどうか分からない。」
「あ。」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、前に僕が見かけた薬はどこにでも売っている薬だったので、特別な薬ってあれの事か?って、ちょっと不思議に思っていたんです。」
「あぁ、それが今回山野君が飲んだ薬だよ。突発的に何かあった時用として出してあるんだ。」
「なるほど…。」
ずっと引っ掛かっていたことが分かり、ちょっとすっきりする。
「その薬がどういう効果を表すか分からないので、5分くらい扉を少し開けて待機しておく。何かあったら声を出すなり、私にわかるような音なりを出してもらいたい。その時には山野君の体の事を第一に考え、君を部屋から出させてもらうがいいかな?」
「こちらからお願いします。もしもの時には山野君の事を第一に考えて下さい。」
お兄さんに向かって頭を下げると、わかったと言って頷いた。
そのまましばらく病院の中をお兄さんについて歩く。
エレベーターに乗ると、関係者以外立ち入り禁止の階を押す。
降りて、廊下の一番奥の扉の前でお兄さんが立ち止まった。
「山野君の部屋はここだよ。私はここで待機しているから。」
「はい。」
「何事もなかった場合用に話をしておく。明朝10時位に山野君のご両親に来てもらう事になった。その後、警察に行くことになるだろう。一応君にも一緒に来てもらいたいので、明日は学校を休んでもらえるかな?連絡はこちらからしておくので。」
「じゃあ、9時くらいには準備しておくようにしておきます。」
「そうだね。優大に迎えに来させよう。」
「あ、はい。」
「では。あ、これを渡しておこう。」
お兄さんがポケットの中から箱を取り出した。
手を出すのをためらった僕のズボンのポケットにそれをねじ込む。
「きちんとした準備のうえでならと言っただろ?いくら妊娠の兆候があるとは言っても、コンドームはきちんとつけてくれよな。」
顔が熱くなりながらも、はいと頷いた。
「おやすみなさい。」
そう言って、そそくさと扉に向くとノックをする。
「どうぞ。」
山野の声がした。
もう一度お兄さんに頷くと、扉を開けて中に入る。
スンと臭いを嗅ぐが、例の匂いはしない。
僕の心も落ち着いたままだ。
開いた扉の隙間から、外にいるお兄さんに向かって大丈夫みたいです。と言うと、分かったと頷いた。
扉を静かに閉じ、部屋の中に目を移す。
病室と言うよりホテルの一室のような部屋に驚く。
「すごいな。」
「俺も驚いた。」
ふふっと山野が笑う。
「そっちに行ってもいいかな?」
尋ねる僕にもちろんと山野が頷いた。
病室と唯一分かるベッドに向かい、側にあるソファに座った。
「玉井から聞いちゃった?」
山野が僕とは反対側の窓に顔を向けたままで尋ねた。
「うん、聞いた。」
「そっか…福木には内緒にしていたかったんだけどな。玉井、言っちゃったのか…。」
「僕が、あの時僕さえ山野に会いに行かなければっ!!」
「ちがうっ!福木のせいじゃない!福木は悪くない!」
山野が僕の方を向く。
その目からは涙がこぼれ、嗚咽を漏らす。
ソファから立ち上がるとベッドに近付き山野を抱きしめた。
「山野、ごめんね。山野の辛い事、苦しい事、何も知らなくてごめんね。」
「福木っ⁈」
「でも、知ったから、僕が守るから。山野を僕が絶対に守るから。」
「福木っ!!」
山野がぎゅうっと僕に抱きつく。
「こんな時だけど…俺、福木に抱かれたい…。」
「玉井がこの部屋は防音だから勝手にしろってさ。」
「玉井が、そんなことを?」
「あぁ、それとこれも。」
そう言って手に持っていた首を保護する器具を山野の首に付けた。
「手も首も噛むなってさ。」
「玉井…。」
首の器具を見つめながらぐっと目を瞑る。
「いいのかな?俺が福木に抱かれても、玉井はいいのかな?」
「よくはないと思うけれど、僕を山野のところに来させたわけだし、しかもこういうのもくれたわけだから、今夜はいいんじゃない?それに、お兄さんからはこれを渡された。」
ポケットにねじ込まれた箱を取り出し、山野に見せる。
「先生がくれたの?」
「あぁ。準備をきちんとしたうえでしなさいってさ。」
「あぁ、もう!これから先生の顔まともに見られなくなりそう…」
「本当に。」
二人で顔を見合わせて笑う。
「でも、そっか。玉井、実はいい奴だったんだな。」
「うーーーーん、それはどうだろう?」
「え?」
「だってさ、あいつ僕を自分の部屋に閉じ込めようとするんだよ。今日だって、拘束具付けられてさ。もしも今ここに来られていなかったら、一体どんなことになっていたか…」
はぁと大きなため息をつくと、山野がエーと驚く。
「あいつ、ヤバいな。」
「うん、かなりヤバい。」
「じゃあ、俺がやっぱり福木を守らないと!」
そう言って。ぐっと腕を曲げる山野と大笑いする。
「上がるよ?」
箱をサイドテーブルに置いて僕がベッドに上がると、山野が少し端に寄った。
「ふかふかだ。いいね、ここ。」
マットをググっと押して山野に微笑みかける。
「こんな所ならいつまででもいたいよ、俺。」
山野も微笑んで僕を見る。
山野の目に僕が映り、それが閉じた。
僕の顔が山野に覆いかぶさり、唇が合わさる。
「ん…」
山野が腕を僕に回す。
そのまま僕が山野に馬乗りになった。
自分の服を脱ぎ、山野の服も脱がせる。
「電気、消して?」
山野が恥ずかしそうに囁いた。
「山野の全てを見たい。ダメ?」
「うぅ…そんな顔で見るなよぉ。いいよって言っちゃうじゃないか…」
「ありがとう、山…幸也。」
「…っ!!!」
幸也の顔が真っ赤になり、僕の体の下に隠れる。
「幸也?」
「いきなり名前で呼ぶの、反則だよぉ。」
「僕の事も呼んでくれる?」
暫くの沈黙の後、
「哲…雄。」
嬉しくて幸也を抱きしめた。
「幸也っ!!」
唇を合わせ、舌を絡め合うとすぐに幸也の腰がもぞもぞと動き出した。
その感触が僕の下半身を刺激する。
熱を持った二人の下半身が擦れ合う度に、幸也の口から甘い吐息が漏れ僕にしがみつく。
「一回出す?」
幸也に尋ねると、うんと頷く。
幸也の上半身を起こし、ひざを曲げさせてその足首を持つと、その間に頭を入れて僕の愛しい芯を口に入れた。
「哲雄っ!!」
僕の頭を掴み、荒い息の中に甘い声が混じる。
「ああっ…あっ…はぁ…あぁぁっ!!」
僕の与える刺激に幸也がのけ反り、口の中にトロッとした液体が広がる。
そのまま、幸也のくたっとなった芯を口から出し、顔をそのまま下に移動していくのに気が付いた幸也が、逃げようとするのを腰を掴んで引き戻す。
渦に口を近付けて、幸也が出した液体を舌を使って押し入れた。
その刺激に幸也も再び反応する。
口を離して指を幸也の口に入れると、くちゅくちゅと赤ちゃんのように僕の指を舐める。
それを幸也の渦にゆっくりと入れていく。
「うんんん…」
幸也の口から苦しそうな声が漏れ出る。
「幸也、大丈夫?」
「哲雄にされるのは幸せだから、気持ちいいから、大丈夫。もっとして欲しいって言ったら、もっと奥までしてって言ったら、哲雄は引く?」
「ううん。僕で感じてくれてるんだって、嬉しいよ。」
そう言って、指をぐぐっと奥まで押し込むと、座っていられなくなった幸也がずずずと滑り落ちるように上半身を横たえた。
膝を立たせたまま、指を増やしていくと幸也の声が少しずつ大きくなっていく。
三本の指を出し入れするとぬちゅぬちゅと音がして、幸也の足ががくがくと震えだす。
「もう…い…っから!これ以上されたら…へんになっ…ちゃう!」
「いいよ。いっぱいへんになってる幸也が見たい。」
「やぁ…哲雄!いやぁ…っ!!」
幸也の口が開きっ放しになり、その端からよだれが垂れる。それをペロッと舐めると、幸也の感じる部分を擦り、とんとんと叩くを繰り返す。
「ぁあぁぁっ!」
腰が浮き、ビクンビクンと痙攣するように幸也が白い液体を吐き出した。
手を伸ばしてお兄さんからもらった箱から一つ取り出し、着けると僕の腰をぐっと幸也に押し当て、ゆっくりと幸也の中に入って行く。
「あぁっ!あっ…あっ…あぁっ!」
幸也の意識とは関係なく勝手に出る声を我慢しようと手を口に当てるが、僕の腰が動くと手は口から外れ、その声もどんどんと大きくなっていく。
ぐりぐりと再び幸也の感じる部分を刺激し、奥の方までえぐるようにして腰を突き動かす。
「いやぁっ!!だめっ!だめっ!哲雄ぉっ…っちゃう!も…っむりぃぃ!!」
「うん、僕も…幸也っ!!」
「あぁぁぁあああっ!!!」
幸也の腰をしっかりと抱きしめ、激しく打ちつけるように腰を動かしながら僕はこの夜最初の分を吐き出した。
くたーとしている幸也の中から僕を引き抜くと、次の一個をつかんで再びつける。
幸也の腰を掴むと、え?という顔をしてムリだよと弱々しい声で言いながら僕の手をはがそうとするが、その手をつかんでくちづけると、
「ごめんね、幸也。我慢出来ない…っ!」
そう言って手を離し、今度は勢いに任せるようにして幸也の中に押し入った。
「い…やぁぁぁあああl!」
悲鳴のような声を上げる幸也を抱き抱えると、僕の上に座らせる。
引力と幸也の体重によって、僕を根元まで飲み込んでしまい、その息苦しさからか、天井を見上げて口をパクパクとさせている。
その口の中に僕の指を突っ込むと幸也は赤ん坊のように吸い付き、僕の指が幸也のよだれでべたべたになる。
吸い付いて離そうとしない幸也の口の中からなんとか引き抜くと、その手で幸也の芯を扱く。手を動かす度に手に付いた幸也のよだれがぬちゅっという音を立てる。
「いやらしい音。幸也のよだれでこんなにいやらしい音が出てるんだよ?」
「やぁっ!恥ずかしいの…哲雄の意地悪。」
先端に擦り付けるようにすると、幸也は足をピンと伸ばし、僕の胸に後頭部をくっつけて甘い嬌声を出し続ける。
先端をくりっと刺激すると
「ひあっ!」と叫びながら、少し液体が出た。
「漏れちゃったの?幸也、可愛い。」
「俺ばかり恥ずかしいのずるい。哲雄も…あ、だめ!やっ…いやぁ!」
僕に何かをしようとする幸也に、
「恥ずかしいって思えるなんて余裕だね。」
そう言って僕が腰をぐぅっとゆっくり動かして、幸也の中に入っていることを思い出させる。
「ま…って!哲雄、待ってよぉ!!」
幸也に哀願されるも、しかし一度動かした腰はもう止めることはできず、勢いのままに突き動かし続けると、僕は2回目の分を吐き出した。
その後も、幸也に残るいろいろな痕跡を僕で上書きするかのように、何回も何回も幸也に僕を刻み付けた。
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