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第35話

優大が扉の前で再び僕の方に振り向く。 僕が頷くと、扉に向き直り鍵を開けた。 瞬間、ノブが回って扉が勢いよく開くと、幸也が優大を押しのけるようにして部屋に入って来た。 そのままテーブルの側に座る僕のそばまで駆けるようにしてくると、僕の膝に座って抱きつく。 「幸也、どうしたの?」 尋ねる僕に幸也は顔を上げず、黙ったままでいる。 優大の方を見ると、扉を閉めてこちらに向かって歩いてくる。 「幸也…大丈夫?」 再び声をかけると、 「大丈夫なわけない!」 そう言って涙目で僕を見て、側に近付こうとする優大をキッと睨みつけた。 実は幸也が僕の膝に座った時から、その盛り上がりに気が付いてはいた。 優大もそれに気が付いているようで、はぁとため息をついて睨む幸也の側にしゃがみ込むと、 「聞き耳立ててるなよな!」 そう言うと幸也のおでこを指で弾いた。 「何すんだよっ!」 「俺が兄貴達に話に行ってくるから、その間に何とかしとけって事だよ!」 そう言うと、立ち上がって僕に覆いかぶさるように顔を近付けると、僕の顎の下に手を添えてぐいっと僕の顔を上に向けさせ、口づけをした。 「何やってるんだよ⁈」 幸也が騒ぎ立てるのをもう片方の手で制し、たっぷりと僕の口中を舐った優大が満足そうに笑顔で部屋を出て行った。 扉が閉まる間際に、鍵はかけろよという言葉を残して。 扉がパタンと音を立てて閉まり、優大の足音が聞こえなくなったのを確認した幸也が僕の上着を両手で握ると悔しそうに僕に訴えた。 「哲雄…俺、勝てないよ。」 「幸也?」 「あいつ、あんなエロくてズルくて、なのに優しくて、強くて…俺、勝てないよ。」 「勝たなくていいんだよ、幸也は幸也のままでいいんだよ。それが僕の愛してる幸也なんだから。」 「俺はずっと玉井って呼ぶ!あいつを受け入れたみたいでいやだから、優大なんて絶対に呼ばない!呼んでなんかやらない!!」 「幸也…ずっと聞いてたの?」 「だって!…仕方ないじゃないか。ノックしようとしたら、哲雄のエロい声が聞こえてきて、それだけでもう動けなくなりそうになって。さすがにこんな状況で皆がいるリビングには戻れないし…」 そういうと、僕の胸に顔をうずめる。 「幸也、鍵かけてこようか?」 首を振ってすくっと立ち上がると、 「俺がかけてくる。哲雄はここで待ってて?」 そう言って扉に向かって行こうとするが、足がもつれて僕の膝の上に再び座った。 「大丈夫?」 「…っ哲雄ぉぉぉぉ!」 顔を真っ赤にして僕の胸に顔をうずめて泣きじゃくる幸也の頭を優しくなでる。 「幸也、ごめんね?僕と優大のせいで、ごめんね?」 「哲雄は関係ない!全部、玉井のせいだ!!」 「でも、これは僕に責任を取らせてくれる?」 そう言って幸也の盛り上がっている部分をそっとさする。 「んっ!哲雄が責任と…ってぇ。」 「いいよ。僕が幸也の全部の責任を持つよ。ここも、そしてここも。」 優しく幸也の下半身と、そしてお腹をさすった。 「え?」 「幸也に関する全ての責任は僕が取るから。幸也は何の心配も感じなくていいんだよ。ただ、まずはここを楽にしようね。」 幸也のジッパーを下げると、その中に手を潜り込ませてゆっくりと優しく擦る。 「あっ!やだっ!もっと強くしてぇ!」 幸也の哀願を、分かってるよと言いながらも同じように優しく擦り続ける。 「やぁっ!哲雄ぉ、イかせてぇぇぇっll」 叫ぶような幸也の唇に指を当て、しーーーっというジェスチャーをすると、幸也が首を振る。 「もう、イきたいよぉ!イかせてぇぇぇ!」 幸也の腰が僕の膝の上で動く。 「ダメだよ、幸也。僕がちゃんとやってあげるから、任せて?」 「…んっ…あっん…っかったぁぁん!」 僕の首に腕を回して僕に向かって舌を出す幸也に、ねだられるがままその舌を僕の舌と絡めて幸也の口中を舐りながら、手は少しずつ、ゆっくりと着実に幸也のゴールに近づいていく。 「な…んか…っる!やだ!哲雄、怖い、ひあっ…ぁあっめ、だめぇぇぇ…っちゃうっあぁぁっ!!!」 幸也が体中を痙攣させてその液体を吐き出すと、そのまま意識を手放して、僕にもたれかかるようにしながら寝息を立て始めた。 その頭を優しく撫でながら、 「優大、聞き耳立ててないで入ってくれば?鍵はかかってないよ!」 扉に向かって顔を上げると、大きなため息をつきつつ、 「鍵をかけ忘れるなよ。」 と言いながら部屋に優大が入ってきた。 僕と幸也に近付き、ただいまという優大に顔を上げてそのキスを受け取る。 「お帰り。」 「全く、気持ちよさそうに寝やがって。ベッドに連れて行こうか?」 「ううん。このままで…。」 「じゃあ、ほら。」 「ん。」 優大からウエットティッシュを受け取り、幸也の全てを吐き出して可愛く僕の手の中に握られているモノをやさしく拭く。 身支度を整えて幸也の体を横たえると。膝枕の態勢にした。 その間に優大が僕を手伝ってくれながら、リビングでの話をしてくれた。 「まぁ、犯人もこの世からいなくなって、だったらわざわざ警察に届け出ることもないだろうってさ。幸也の安全が担保された事で、ご両親も安心して帰っていかれた。 兄貴の方も、例の匂いのこともあるから、このまま継続だってさ。子供に関しては、保留かな?」 「保留?」 「確定してから考えるってさ。幸也は前にも言ったが産みたいみたいだけどな。」 「そっか。」 一通り話すと僕と幸也を抱きかかえるようにして優大が座る。 その胸に体を預けると、安心感が体中を満たしていく。 「何で鍵をかけなかった?」 「幸也がかけに行かれなかったから…」 「幸也のイくのと、俺が帰って来るタイミング、見計ってただろ?」 「そんなにうまくなんて出来ないよ。」 「俺が扉を開けるのを期待していたのか?」 「何に対する期待?」 「そうだな…俺が幸也とお前のしていることに我を忘れて…勘弁しろよ。お前を幸也とシェアする気にはならねーよ。」 「トイレでのアレは?」 「アレは幸也の暴走だろ?俺はするつもりはなかったからな…ちょっと羨ましがらせたいと思ったのはあったけど。」 僕が吹き出して笑うのを見ながら雄大がため息をつく。 「お前が思っているより、自信もないし、必死なんだよ…少しでもお前によく見られたいって、焦ってばかりいる…。」 「優大…。」 「なぁ、俺の愛しているやつは、いつか俺を愛してくれるかな?」 優大が僕の頭を撫でながら、耳元で囁く。 「僕に優大は何をくれる?」 「質問に質問か…まぁ、いい。…そうだな、お前と幸也とそれから増えていく家族を俺が守る。お前達が何の苦労も苦悩もしない環境を作る。もちろん金銭的なことも含めて全てだ。俺に愛されるだけの人生を、お前にやる。」 「愛されるだけ…?愛されなくていいのか?」 「愛されたいさ。だがさっきも言っただろう?お前と幸也の幸せを壊している自覚はあるって…だからそれ以上は望めないって思っている。哲雄が俺のそばにいてくれるなら、それだけで俺は幸せになれるから。ボディーガード位でいいから俺がそばにいることを許して欲しい。」 「支配とか言い出すかなりエロいボディーガードだけどな。」 「支配というよりは独占欲だし、仕事分のご褒美はもらわないとな。」 「拘束するようなボディーガードに、か?」 「守るためにはその体に制限をかけるのも立派なボディーガードの仕事だからな。」 「勝手だな。」 「あぁ、そうだな。」 「でも、それすら受け入れてしまう僕のこの感情は何なんだろうな?」 「え?」 「お前に、優大にあんなに無理矢理、無茶苦茶やられても、それを受け入れ、寧ろもっと優大にされたいって思うこの僕の感情に優大ならどんな名前をつける?」 「哲雄…本当に?俺がつけていいなら俺への愛だな。」 「まんまかよ。」 「ああ。だけどそれをずっと言って欲しかったんだ。この言葉を哲雄のこの口で言って欲しいんだ。」 「優大は言い過ぎなんだよ。まったく…優大は僕に…愛されているよ。僕は雄大も幸也、君のことも愛してる。二人を愛しているんだ。どちらかなんて選べない位…。」 「大丈夫、俺の方がこのポンコツボディーガードより哲雄を愛しているから!」 眠りから覚めた幸也が僕の膝の上に座って抱き付く。 「幸也、退け!!」 「…優大、邪魔!!」 「え?幸也?」 「だって、家族になるのに玉井じゃおかしいから…しかたないだろう!」 「どんなツンデレだよ!」 二人の会話を聞きながらゲラゲラと笑う僕を二人がギュッと抱きしめてくれた。 暖かく幸せな時間の中で、僕は三人でいるこの関係が次の段階に進んで行くのを感じていた。

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