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第一章・2

「君、いい声してるね。穏やかで、心が癒される」 「ありがとうございます」 「起こし方も、よかった」 『朝ですよ。起きてください』   「お客様、もう終わりました! って怒られたんじゃ、ばつが悪いからね」  ふふふ、と笑う和正に、祐也も好感を持った。 (寝起きが悪くて、当たり散らすお客様もいらっしゃるのにな)  このままあと1時間、祐也とお喋りしていたい和正だったが、そうもいかない。  勢いをつけて、リクライニングチェアから起き上がった。  ぴしりとスーツを着込んで、きりりとネクタイを締めた和正は、ビジネスバッグを手にした。 「ありがとう。じゃあ」 「あ、あの」 「ん?」 「よろしかったら、またお越しください。お待ちしてます」 「うん。また来るよ」  片手をひらりと挙げて行ってしまう和正を、祐也はずっと見送っていた。

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