3 / 97
第一章・3
和正は、イベント会社に勤めている。
今回の商用で、無事に夏の企画を任され社に戻ったが、頭の痛いことも多かった。
「真鍋(まなべ)くん。君の企画だけど、安全面にもう少し気を配った方がいい」
「え? でも、通ったんですよね?」
「骨組みは、だよ。今から、もっと細かいところを詰めなきゃいけないよ」
「安全面、といっても。既存の化石採集キットを使って、子どもたちに発掘体験をさせるだけですけど?」
「既製品だから安全、とは限らない。石膏をハンマーで砕く時、破片が目に入るかもしれないよ?」
「僕、一度試しましたけど、そんなことありませんでしたよ」
万が一、ということもある。
そう、和正は押した。
「その危険性を防ぐために、必要なものは?」
「えっと……、ゴーグル、ですか?」
そのとおり、と和正は少し笑顔を見せた。
ともだちにシェアしよう!