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第二章・9
「ごちそうさまでした。いつもすみません」
「また、付き合ってくれたら嬉しいよ」
「じゃあ。僕、これで」
「うん。気を付けて」
繁華街の中へ歩いてゆく、祐也の姿。
和正は、彼が雑踏に消えるまで見送った。
祐也が向かった方向には、あの店がある。
「どうしよう」
また、行こうか。
そして、彼を指名しようか。
「こんなに悩むのは、若い頃に稟議書の書き方で難儀した時以来だ」
しかし、ここで手をこまねいていては、誰か別の男が祐也を指名するだろう。
和正は、見知らぬ男に祐也が蹂躙される姿を想像……、したくなかった。
「他の男に獲られるくらいなら、嫌われた方がマシだ!」
そうして和正もまた、祐也の消えた方へと大股で歩き始めた。
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