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第三章 心の行方

 夜10時きっかりに、和正は店の門をくぐった。 「すばるくんを、お願い」 「かしこまりました」  会員登録までして、和正は祐也の待つ部屋へ進んだ。  こうなれば、とことん付き合うつもりだった。 「来てくれたんだね、ありがとう!」  耳慣れた温かな声も、明るい笑顔も変わらない。  こわばる表情も、変わらなかった。 「鳴滝さん……、どうして?」 「清水くん、ごめん」 「いえ。また、水割りですか?」 「うん、頼むよ」  祐也が水割りを作る間中、和正は言い訳を考えていた。  沈黙が、重い。  うまい言葉を思いつかない和正は、素直な気持ちを口にした。

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