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第三章・2

「君が、知らない男に、その。抱かれるのが、嫌なんだ」  それくらいなら、俺が客になる、って思って、また来ちゃった。  そんな和正の言葉に、祐也は涙がにじみそうだった。  だが、唇から紡いだのはビジネスライクな言葉だった。 「ありがとうございます。でも僕はここで働いてる以上、どんなお客様でも受け入れます」  鳴滝さんも、同じです。  そう言って、和正に渡した水割りのグラスを、彼の手ごと包んだ。 「よかったら、僕を好きにしてください」  ぐらりと来た。  祐也への欲望が、大きく傾いた。  そう、俺はここの客。  清水くん、いや、すばるくんを抱いても、誰も咎めやしないのだ。  からからに乾いた喉を、和正は水割りで潤した。 「清水くんも、飲んで」 「あの。ここでは、すばる、って呼んでください」 「嫌だ」 「えっ?」 「俺は客だ。好きなように、呼ばせてくれ」 「はい……」  和正と祐也は、水割りを数杯酌み交わしていった。

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