24 / 97

第三章・4

「もうダメだ。眠い」 「このまま眠っていいですよ」 「一つ、お願いがあるんだけど」 「何でしょう」 「子守歌、歌って」 『赤い目玉の蠍 広げた鷲の翼……』  優しい祐也の歌声を聞きながら、和正は安らかな心地で眠りに落ちた。 「鳴滝さん、ホントにいい人なのかな。それとも……」  それとも、僕に魅力が無いのかな。  和正に毛布を掛け、祐也はふるっと震えた。  彫りの深い端正な顔立ちを見ていると、胸がどきどきと高鳴って来る。 「僕のことを、抱きたい、とは思ってくれないのかな」  祐也は、また意識のない和正にキスをした。  応えのない、孤独なキスだった。

ともだちにシェアしよう!