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第三章・4
「もうダメだ。眠い」
「このまま眠っていいですよ」
「一つ、お願いがあるんだけど」
「何でしょう」
「子守歌、歌って」
『赤い目玉の蠍 広げた鷲の翼……』
優しい祐也の歌声を聞きながら、和正は安らかな心地で眠りに落ちた。
「鳴滝さん、ホントにいい人なのかな。それとも……」
それとも、僕に魅力が無いのかな。
和正に毛布を掛け、祐也はふるっと震えた。
彫りの深い端正な顔立ちを見ていると、胸がどきどきと高鳴って来る。
「僕のことを、抱きたい、とは思ってくれないのかな」
祐也は、また意識のない和正にキスをした。
応えのない、孤独なキスだった。
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