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第三章・5
「キッズイベントなんだから、軍手はちゃんと子ども用の小さなものを準備すべきだろう。気づかなかったのか?」
「すみません。でも……」
「でも、何だ。言い訳する? 聞くよ、一応」
「大は小を兼ねる、と思って。それで」
時と場合による、と和正は真鍋を突っぱねた。
「ぶかぶかの軍手でハンマー振るったら、危険。覚えておいてね」
「はい……」
滅多に見ない和正の怒りに、真鍋だけでなく周囲もすくんでいた。
その和正は、荒れる自分に、荒れていた。
(軍手なんか、発注しなおせば済む問題だろう? それを必要以上に叱ること、あるか?)
解ってる。
自分が、どうしてこんなに荒れてるか。
昼食のコンビニおむすびを屋上で食べながら、和正は眉間を指で押さえた。
「清水くん……」
手を握ったまま眠ってしまった俺を、彼はどう思っただろう。
「年のくせして、子どもっぽい。セックス一つできない、臆病者」
自分で、そう答えていた。
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