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第三章・7
「皆さま、星空の旅はいかがでしたでしょうか。また『銀河』へ、どうぞお越しください。本日は、ありがとうございました。お足元にお気をつけて、お帰りください」
プラネタリウムのナレーションを終え、祐也はふぅと一息ついた。
人波が、出口に向かう。
今回は16時の上映なので、あの人が眠っている姿は、無い。
「鳴滝さん……」
今日は、来てくれるだろうか。
また、彼をそっと起こしたい。
一緒に食事をしたい。
そして……。
(お店に。アガメムノンへも、来るかな)
来てくれれば、嬉しい。
そして、その反面、切ない。
手を握るだけで、僕には一切色事を持ち込まない、鳴滝さん。
やたら可愛いポチ袋に、高額のチップを忍ばせて渡してくれた。
(でもその後、別のお客様と僕は……ッ!)
仕事と割り切って働けるようになったつもり、だった。
だが和正と出会って、祐也はそんな自分が汚れた人間に思えて来た。
「僕は、鳴滝さんにはふさわしくないのかもしれない」
やめよう、こんな考え。
また、泣きたくなってくる。
祐也もまた、自分の気持ちを持て余していた。
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