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第四章 恋人未満
震える祐也の体を抱きしめ、和正はその背中や肩を撫でてやった。
「俺は若い頃、この店の常連だったんだよ? 風俗で働くお兄さんたちに、散々世話になったんだ」
だから、清水くんも妙な負い目なんか感じないで欲しい。
そう、諭したつもりだった。
「でも、鳴滝さんとデートした後に、他の人と……」
「デート、と思ってくれてたんだ。嬉しいね」
和正は、よろめく祐也をソファに掛けさせた。
「少し、飲もうか。ね?」
「はい……」
手元のおぼつかない祐也に代わって、和正が水割りを作った。
少し、濃いめの水割りを。
「酔えば、少しは落ち着くよ」
「そうでしょうか」
酒で、気持ちを紛らわせてしまえばいい。
和正は、短絡的に考えていた。
しかし、水割りを一杯飲んだところで、祐也は気持ちが悪いと言い始めたのだ。
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