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第五章 星空の下で

 新幹線に乗り、電車に乗り、レンタカーを借りて、半日がかりで二人は目的地へ着いた。  和正の、故郷だ。 「小さな町だったけど、随分変わったな。コンビニが、できてる」  目を細めて、和正はあたりを見回しながら車をゆっくり走らせた。 「あった。町に一つの、旅館。まだ営業してるかな?」  幸い息子がUターンして跡を継いでおり、宿泊することができた。 「もしかして、鳴滝くん!?」 「鉄ちゃん、久しぶり!」  旅館の主とそんな会話をする和正を、祐也はうらやましく思っていた。  帰る場所がある、って、いいな。  僕にはもう、戻るところなんか、無い。  物思いに耽るところに、和正が手を引いた。 「泊めてくれる、って。部屋へ行こう」 「はい」  通された部屋は、昭和の香りが漂う和室だった。  テレビは液晶の薄型で、そこだけが近代的だったが。 「疲れたろ? 出かけるのは夜だから、少し仮眠を取ってもいいよ」 「仮眠は、和正さんの方が得意なんじゃないですか?」  長い旅路で、祐也は和正にそんな冗談が言えるまで、打ち解けていた。

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