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第五章・3

 ちょうど日没を迎え、西の空には宵の明星が明るく輝いている。 「あの星は、祐也」 「僕、ですか?」 「俺の変わらない日常に、突然現れたお星さま」  僕は、褒められてるんだろうか。  それとも、口説かれてるんだろうか。  返事に困っていると、和正はシートを広げて手でぽんぽんと叩いた。 「ここに、寝て」 「はい」  二人で、シートの上に仰向けになった。  藍色の空が次第に墨を流したように暗くなり、無数の星々が瞬き始めた。  満天の、星空。  プラネタリウムで見慣れたはずの光景が、祐也には新鮮に感じられた。 「すごい。空が、星で埋め尽くされてる」  リアルで、こんな星空を見るのは初めてだった。

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