42 / 97
第五章・4
「祐也、解説してくれる? あの一番強く光ってる星の名前は、何?」
「いえ、あの。星がみんな明るいので、どれが1等星か解りません……」
これでは、星座も解らない。
6等星までしっかり自己主張しているので、目印になる明るい星がかすんでしまうのだ。
二人でお喋りをしながら星空を眺めていたが、やがて黙ってしまった。
星空に、圧倒されてしまった。
そんな中、ふと和正が口を開いた。
「この空の星を、全部祐也にあげるよ」
「いいんですか? 和正さんの、故郷の星ですよ?」
「いいんだ。一つ残らずあげるから、俺の願いをきいてくれる?」
何でしょう、と言う祐也を見ずに、和正は仰向けになったまま話した。
「アガメムノンを、辞めて欲しい。君が、他の男に肌を許すことが、俺にはもう耐えられない」
「でも、奨学金を返さないと」
「代わりに、俺のマンションへ来て欲しい。家事をしてくれれば、対価を払うから」
祐也は、眼を円くした。
ともだちにシェアしよう!