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第六章・3
さて、と湿った空気をはらうように、和正は明るい声で言った。
「いつ、引っ越して来られる? 軽トラ借りて、手伝うからさ」
「いいんですか?」
「荷物は少ない、って言ってただろう? わざわざ業者に頼むと、お金もかかるし」
ここは、和正に頼ることにした祐也だ。
正直、引っ越しの費用をどうしようか、と悩んでいたところだ。
「よろしくお願いします」
「任せといて」
食器類を新聞紙に包んだり、本を段ボールに詰めたりと、細かな作業が終わった後に、祐也は引っ越すことにした。
プラネタリウムの仕事が、休みの日だ。
「それで、あの店は辞めてくれたんだね?」
「はい」
祐也は、アガメムノンを辞めた。
和正のためだ。
和正のためだけに、ボーイズ・バーを辞めたのだ。
店側は、何とか祐也を引き留めようとした。
今より良い待遇も、提示してきた。
しかし、祐也の決意は固かった。
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