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第七章・7

「祐也、一つ訊いてもいい?」 「は、い……」 「君がここに来てから、一ヶ月くらい経つんだけど。俺、祐也の誕生日とか、知らないんだよね」 「あ……」  教えてくれる? と和正は祐也の耳元で囁いた。  いつだろう、彼の誕生日は。  7月7日とかだったら、星の好きな祐也にぴったりなんだけどな。  そんな調子で気軽に訊いた和正だったが、祐也の答えは予想外だった。 「いつ、がいいですか? 和正さんの好きな誕生日を、僕につけてください」 「えっ?」 「僕、過去はもう捨てたいんです」 「祐也」  ごめん、と和正は謝っていた。 「何か、辛いことあったのかな。昔に。不用意に訊ねたりして、ごめん」 「いいえ、悪いのは僕なんです」  一ヶ月も時間があったのに、僕は自分のことを何も和正さんに話してない。  ごめんなさい、と祐也は涙をこぼした。 「あぁ、泣くなよ」  言いたくなければ、言わなくてもいいことだってあるさ。  和正は、ただ祐也の髪を撫で続けた。  可哀想な恋人を、慰め続けた。

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