63 / 97
第七章・7
「祐也、一つ訊いてもいい?」
「は、い……」
「君がここに来てから、一ヶ月くらい経つんだけど。俺、祐也の誕生日とか、知らないんだよね」
「あ……」
教えてくれる? と和正は祐也の耳元で囁いた。
いつだろう、彼の誕生日は。
7月7日とかだったら、星の好きな祐也にぴったりなんだけどな。
そんな調子で気軽に訊いた和正だったが、祐也の答えは予想外だった。
「いつ、がいいですか? 和正さんの好きな誕生日を、僕につけてください」
「えっ?」
「僕、過去はもう捨てたいんです」
「祐也」
ごめん、と和正は謝っていた。
「何か、辛いことあったのかな。昔に。不用意に訊ねたりして、ごめん」
「いいえ、悪いのは僕なんです」
一ヶ月も時間があったのに、僕は自分のことを何も和正さんに話してない。
ごめんなさい、と祐也は涙をこぼした。
「あぁ、泣くなよ」
言いたくなければ、言わなくてもいいことだってあるさ。
和正は、ただ祐也の髪を撫で続けた。
可哀想な恋人を、慰め続けた。
ともだちにシェアしよう!