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第八章 全てを、彼に。
「健康診断の数値が、良くなっている……」
これは絶対、祐也のおかげだ、と和正は思った。
彼が来てから朝食はちゃんと食べるようになったし、弁当も持たせてくれる。
夕食はもちろん、栄養のバランスの取れた手料理だ。
「祐也、ありがとう」
「和正さんの役に立てて、僕嬉しいです」
二人で、祝杯をあげた。
ワインはグラスに2杯まで、の祐也が決めた約束はあるが。
「それにしても、祐也はホントに料理が上手だね」
「小さい頃から、よくお手伝いしてたんです」
「そう。偉いね」
それ以上深入りはしなかったが、和正はふと見せてくれた祐也の過去に喜んだ。
(子どもの頃から、キッチンに立っていたんだな)
親のお手伝いをしていた、なんて可愛い少年時代の彼が思い浮かんでくる。
(自慢の息子だったんだろうな)
だのに、なぜ祐也はあんなことを言ったのか。
『僕、過去はもう捨てたいんです』
家族も捨てたい、ということだろうか。
そのうち話して欲しいな、と考えつつ、和正はワインを干した。
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