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第八章・2
和正に身の上を話さなければ、とは祐也も感じていた。
(和正さん優しいから、何も訊ねて来ないけど)
それでも、気にはしているに違いない。
僕の過去に、何があったのか。
(何か、きっかけがつかめれば)
背中を押してくれる出来事があれば、言えるような気はしていた。
そしてそれは、自分で起こさなければならないのだ、ということも解っていた。
しかし、何もできないまま、時だけは過ぎて行く。
祐也が和正のマンションに来てから、もう2ヶ月近く経つ。
穏やかで、安らかな日々。
和正が残業で遅くなる時もあったが、祐也は眠らずに待っていた。
いつも、彼と同じ時刻にベッドに潜り込んでいた。
「和正さん、今夜は?」
「ん~、ごめんね。ちょっと疲れてて、できないみたい……」
毎日毎晩セックスをするわけではなかった。
祐也も、自分から積極的にねだることはしない。
だが、不安になることもあった。
(和正さん、僕に飽きて来たんじゃないよね?)
そんな夜は、なかなか寝付けなかった。
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