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第八章・3
ある日の夕方、和正からメールが届いた。
『祐也、今夜の夕食は何かあっさりした軽めのものをお願い出来るかな? 多分、遅くなると思うんだ。ごめんね』
「間が悪かったな……」
実はその日、祐也は新しくオープンした中華飯店で甘酢肉団子を買ってきていたのだ。
長い行列に並んで、ようやく買ったお惣菜だった。
どうしよう。
ほどいて、肉そぼろにして、中華粥にでもしようかな。
そこまで考えて、祐也は大学時代に付き合った、元カレのことを思い出した。
「あの頃だったら、せっかく買ってきたんだから、ってそのまま出して、怒られてたよね」
ふっと、祐也は和正のことを考えた。
「和正さんだったら、どうだろう。やっぱり、怒るかな」
試す、わけじゃない。
彼の心が、知りたいんだ。
いつも優しい、和正さん。
もし僕が、彼を怒らせるようなことをすれば……?
「和正さん、怒るかな。どんな風に、怒るんだろう」
和正という人間の、裏も表も知ってみたい。
祐也は、そんな贅沢を抱えるようになっていた。
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