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第九章 お客様、どうぞ星空の旅へ……
和正は、迷っていた。
「聞いてくれる? 祐也。俺の悩み」
「僕でよければ」
実は、と祐也の淹れてくれた緑茶を飲みながら、和正は打ち明けた。
「ヘッドハンティング、された」
「えっ!?」
大手のイベント会社から、好待遇を約束するからこっちへ来ないか、と誘われた。
「今の会社を辞めて移れば、課長だって」
「和正さんは、今の会社に未練があるんですか?」
「あるといえば、ある。無いといえば、無い」
「悩んでますね、和正さん」
そうなんだよ~、と和正は頭を抱えた。
「職場は少し遠くなるけど、このマンションから通えない距離じゃない。ただ……」
「ただ?」
「プラネタリウム『銀河』が、遠くなる」
まだ『銀河』へ時折通って、祐也のナレーションを聞きながら星々を眺めることを楽しみにしている和正だ。
それができなくなるのは、痛かった。
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