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第九章・2

「僕は一緒に住んでるじゃないですか」 「うん。でも、あの制服姿も好きなんだよね」 『皆様、『銀河』へようこそおいでくださいました。わたくし、今回の上映のナレーターを務めさせていただきます、清水 祐也です……』  そして、あの美声を聴くのも大好きだ。 「お返事は、いつまでにすればいいんですか?」 「なるべく早く、だって。それもそうだよね。たぶん一週間以内に、だな」  チャンスじゃないですか、と祐也は声を弾ませた。 「課長さんになれるんですよ? 今の会社への未練、って何ですか?」 「ん~、今度の夏にあるキッズイベント、若手に任せてあるんだよね。それを見届けられない、っていうのがちょっと気になる」  和正さん、責任感が強いんですね、と言いながらも、祐也は胸をざわめかせた。 (若手が気になる、って。僕より気になる人なんて、作らないでください!)  しかし、悩んで眉間に皺を寄せている和正を見るのは辛い。  彼の悩みは、祐也の悩みでもあるのだ。 (何とか、元気づけてあげたいな)  緑茶の残りを干しながら、祐也は思いを巡らせていた。

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