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第九章・9
二匹で寄り添い暖をとるネコのように、二人は抱き合ってぬくもりを分かち合っていた。
時折、ふいに苦しいほど切なくなる。
そんな時は、そっと柔らかいキスをした。
「会社のこと、明日よく考えてみるよ」
ふと、和正がそうつぶやいた。
「僕、和正さんにどこまでもついて行きます」
祐也の言葉は、自分にも向けられたものだった。
僕は、この人を愛してる。信じてる。
だが、和正の返事は意外なものだった。
「俺、そんな資格あるのかな。祐也について来てもらう資格のある、人間なのかな」
「和正さん?」
不安げな祐也の声に、和正は息を吐いて笑った。
「ごめん、心配かけて。祐也は、明日休みだったよね」
「はい」
「俺も有給とって休むから。ちょっと、聞いて欲しい話があるんだ」
祐也の胸は、ざわめいた。
(和正さんは、一体何を考えてるの?)
「今夜は、もう寝よう。おやすみ、祐也」
「おやすみなさい」
和正はそれきり目を閉じ、祐也も瞼を閉じた。
(大丈夫。僕は、和正さんを信じてる)
それでも、少しだけ彼を抱く腕の力を強くした。
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