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第十章・2
「俺は子どもの頃に、中高一貫の男子校に通ってね。そこで自分は女性より男性の方が好きなんだ、って気づいたんだ」
好きな子もできたし、付き合いもした、という和正の言葉には、祐也は少し妬けた。
「全寮制だったから、早くから親元を離れて暮らしてた。大学に進んでも、一人暮らしをしてた」
だから、両親とはあまり触れ合いがなかったんだ。
そう、和正は言う。
「でも、愛情が無かったわけじゃない。よく、小包が届いたよ。カップ麺とかレトルトとか」まるで趣味の合わない服を、送ってくれたこともあったっけ。
たまに帰省すると、喜んではしゃいでくれた。
小さく笑って、和正はマグカップに口を付けた。
「だが、社会に出てからは、結婚を勧めるようになってきた」
前に勤めていた会社の男性と、オフィスラブをしていた和正にとっては、それは大きなお世話だった。
それでも、何も知らない両親は、年頃の女性を勧めて来る。
写真だけでも見てみろ、会うだけ会ってみろ、と押して来る。
「それでとうとう、白状する決心をしたんだ。俺は同性愛者です、って」
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