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第十章・4

「和正さん……」  どうしよう。  何て言えばいいんだろう。  慰めようがない。  祐也は、平凡な言葉しか思いつかなかった。 「事故は、和正さんのせいじゃありません」  そっと、震える肩に触れた。  だが和正は、下を向いたまま続けた。 「両親が死んで、莫大な遺産が俺に転がり込んできた。そしたら、急に俺の周りに人が集まり始めたんだ」  疎遠だった親戚、自称・父の親友、一度フラれた恋人までもが、近づいてきた。 「解ってた。みんな、口ではお悔やみを言うけど、残された財産を狙ってた」  そうして、和正はぐんにゃりと天井を見上げた。 「金なんかいくらあっても、父さんや母さんは帰ってこない。俺は、さんざん無駄遣いをしたよ」  マンションを買い、車を買い、毎晩のように風俗で派手に遊んだ。

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