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第十章・9
長いこと、二人でもたれ合って時を過ごした。
ソファに座って、虚脱していた。
誰にも言わなかったことを、言えなかったことを、初めて話したのだ。
告白するために使ったエネルギーは大きく、体はくたくただった。
脳も、ぼんやりと霞がかっていた。
だが、心だけは温かかった。
ひたひたと、最愛の人からの言葉が染み入っていた。
『和正さんは、情けなくなんかありません。僕は、それを良く知ってます』
『辛かったね。でも、生きている価値、充分にあるよ』
『好きになってくれて、ありがとう。和正さん』
『俺はもう、祐也なしでは生きられないんだから』
愛している。
愛されている。
ただシンプルな、その事実に涙した。
涙の後には、笑みがこぼれた。
少し、しょっぱい味のする頬にキスをした。
苦い言葉を吐き終えた唇に、キスをした。
そして、甘い時を過ごした。
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