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第十一章 星の道しるべ

「はい、最後の返済です」 「確かに、お受け取りしました」  二人顔を見合せ、くすっと吹き出した。 「それにしても、毎月20万円きちっと払うなんて。ホントに祐也は律儀だね」  祐也が和正と暮らすようになって、10ヶ月が過ぎた。  奨学金200万円も、今日で完済だ。 「ね、何かお祝いしようか!」 「和正さんは、ホントにお祝いが好きですね」  笑う和正は、結局ヘッドハンティングには乗らなかった。 「役職が上がれば、その分現場から離れちゃうからね。俺は、自分の手で何かを成し遂げたいんだ」  そんな風に祐也には説明したが、転職に魅力が無いわけではなかった。  新しい場所で、新しいものを創り上げたい。  そう、考えもした。  だが、それを実行するにはまだ早すぎる、と和正は思った。 (祐也の心も身体も、まだ生々しい傷を負っているんだ)  和正が転職すれば、必ず残業や休日出勤が多くなる。  祐也の傍に、居てあげることができなくなるのだ。  今、彼を取り巻く環境を変えることはマイナスだ、と結論付けた。

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