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第十一章・3

 しかし、和正の脱サラは、彼本人の問題だ。 (どうして和正さんは、僕に意見を求めるんだろう)  言葉に迷う祐也に、和正は言った。 「祐也は、俺の大切なパートナーだろ? 家族だろ? やっぱりこんな大切なこと、一存では決められないよ」 「和正さん……」  胸が、いっぱいになってくる。  温かな想いで、満たされてくる。  そんな祐也に、和正は優しく語りかけた。 「それに、この計画は祐也の協力なしでは実現しないんだ」 「僕、ですか?」 「移動プラネタリウムのイベントを、始めたいと思ってる」  移動プラネタリウム、と祐也は繰り返していた。 「エアドームの内側に、星を投影させて楽しんでもらうんだ。もちろん観るだけじゃなく、楽しい企画も満載にしたい」  そのファシリテーターを、祐也にお願いしたいんだ。 「大学で学んだ地学や、教育者としてのスキル。その力を、俺に貸してもらいたい」  和正の提案に、祐也の目の前はどんどん明るくなっていった。

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