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第38話
各務side
「ちーくんはね…」
病院に着き治療しながらはーくんとやらが語りだした
「ちーくんね、ちっちゃいとき少しの間うちに住んでたの。」
弦ちゃんが監禁されていたときのことだろう
はーくんとやらにとってその日々はただ一緒に住んでいたということになっているらしい
「僕はちーくんがずっと大好きでとってもうれしかったんだ。だけど…凜くんがちーくんを独り占めしてた。僕が話し掛けようとするといつも凛くんに叩かれて…縛られて真っ暗な倉庫に閉じ込められてた。ちーくんもそうでちーくんが自分はちーくんで、きーくんじゃないって言ったら同じように叩かれて閉じ込められてた。ちーくんは真っ暗なとこは苦手だったみたいだけど僕がいたからかな?泣いたことないんだよ。にこにこしてるの。
それがとってもかっこよくて僕はますますちーくんが好きになった。僕は閉じ込められてもちーくんと一緒にいられる唯一の時間だったから幸せだったんだよ。そのちーくんがある日一人で閉じ込められたの。」
弦ちゃんは部屋が明るいまま何か音がしていないと一人では眠れないと溢していた。人といるときは平気だけど一人だとだめだと…そういうことがあったからか…
「そのときからかな?なんだかちーくんの様子がおかしくなってった。自分はキユだって言い始めたの。違うよっていうけど譲らなかった。そんなこんなしてるうちにたくさんの大人がやって来てちーくんと凜くんは連れてかれたの…僕はね、その人たちからちーくんを助けるために何年も何年もちーくんの側でその時を待ってたの。やっと助けられたのにあの人が邪魔したの。あのおっきい人」
「摂理のことか?」
「そんな名前だったかな?わかんないけど。ちーくんはね僕と一緒にいたいの。だっていってたもん。はーくんと一緒にいるよって」
取り敢えずこいつもおかしい。けど弦ちゃんの倒れた理由は何となく見えてきた。
幼い頃の記憶の中で寺崎という存在は絶対的で逆らえないものだったんだ。
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