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第46話
摂理side
数時間前
千雪ちゃんが天理を伴って診察室に入る。
あぁ。やっぱり君は天理を選ぶんだね…わかっていたけど…寂しいな。
診察室のドアを見つめながら思っていると各務が声をかけてきた
「摂理」
「各務。」
「あのさ。弦ちゃんとお前達って面識あるの?」
「…千雪ちゃんが覚えているのかはわかんないけど…実は穂積と会うずっとずっと昔から俺たちは彼を知ってた。穂積と関係があると知ったのはずっと後だ」
「前田さんがさ。天理の写真もってた。弦ちゃんの好きな人なんだって言ってた。さっきは誰なのかピンとこなかった。だって俺の知ってる天理とはかなり掛け離れた容姿をしていたから。あの写真…弦ちゃんの職場の入り口だったのはわかったから同じ職場の人ってことはすぐわかったんだけど…。まさかそれが天理なんて」
「…そうか。残念だなぁ。千雪ちゃん俺も狙ってたのにな」
「二人が同じ会社なのは知ってたのか?」
「あぁ。知ってたよ。千雪ちゃんが入社してきたって天理に聞いてたから」
「天理は弦ちゃんのことどう思ってるの?」
「さぁね。でも好意はあるはずだよ。だって千雪ちゃんの話しは良くしてくれてたから。挨拶もろくにできない自分なのに会えば必ずしてくれるって。他の人は自分の態度をみかねて挨拶はしなくなったし会話も仕事で必要なとき以外はしないのにって。部署も違うし関わりはあまりないけどそれでもたまに元気な姿が見られるととても嬉しいって…あいつがさ甘いもの好きになった理由って千雪ちゃんなんだよ」
「そうなのか?」
「うん。千雪ちゃんがね、天理にお菓子をくれたんだ。お見舞いとしてもらっていたチョコレート菓子ね
…あれ?千雪ちゃんが小さい頃入院してたのは知ってる?」
「…知らない…」
「…さっきの寺崎が関係してて…そいつのせいで小さい頃入院してたんだ…精神的に…おかしくなって…その入院してた頃から俺たちは千雪ちゃんを知ってる。」
「じゃあ…弦ちゃんが前倒れたのって…いつも笑ってる理由や…誰にでも誘われたらついていくところって…中身がどこかに行っちゃってるように見えるときって…」
「…うん。そうだね。おそらくその頃のトラウマ…それを…癒せる相手は…天理…かもしんない。そのために俺は…悪になるよ」
「何するつもりだ」
「あの頃…寺崎にされていたことを再現する」
「はぁ!?」
「あの子には負の感情がない。でもそれがないと心から助けてって叫べない気がするんだ。だから…荒療治にはなるけれど…それがあの子を…」
「…あのままじゃ…ダメなのか?…」
「正直…わかんない…けど負の感情が自分を守ることに繋がる…お前も知ってる通り彼は苦しければ苦しいほど笑う…でも…それは本人は無自覚なのだ…」
「けど…逆に壊れてしまったら…」
「だから天理が必要なんだ…大丈夫だよって全てを受け入れ愛してくれる存在が…天理も人に対する好意への感情が乏しい…それは育ってきた環境が俺とは違うから…天理のことは…知ってるでしょ?」
「ん…」
「天理と千雪ちゃんは似ているからこそ惹かれ合うのだと思う。初めて会った頃からそうだった。千雪ちゃんは俺には涙を見せたことはない…けど天理には見せたことがあるんだ…まぁその一度だけだったけどね」
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