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第47話

摂理side 天理は昔は今と違ってとても可愛らしい容姿をしていたからなのか幼い頃から性的虐待を受けてきた。 うちにいた使用人や俺に色々教えてくれる家庭教師や家に訪れた多くの大人達からの一方的な行為…俺は…それが異常だとは知っていた…けどどうすることもできなかったのだ… 忙しかった祖父や父はそのことは知らない…天理にたいしては無関心だったことも理由の一つとしてあるかもしれないけど。 祖母も母も早くに亡くしたので守ってくれる大人がいなかった… 天理はそんな生活をしていたからなのかいつも笑ってる千雪ちゃんとは逆で笑うことを忘れてしまった。 食事もあまりしなかった…。というより十分に用意してもらえなかったのだ。だから俺に出された食事をそっと隠して無理矢理あいつに食べさせた。 十分な勉強をさせてもらえなかったし声を出すことも制限されていたから言葉も片言しか発せなかった…だからたくさん語り掛けたし本を沢山読み聞かせた。 あいつらの目を盗んで外へ連れ出したこともあった。 そんなとき出会ったのが千雪ちゃんだ。 俺たちよりも幼いのに誰にたいしてもにこにこ笑顔で相手が望む言葉を掛けていた。 その姿は俺たちにとって眩しかった。それが千雪ちゃんの防衛方法だなんてあの頃は気が付かなかったけど 俺はすぐに千雪ちゃんを気に入ってしつこく会いに行った。 俺が行けないとき…家庭教師が来ていた時間が主になるがその時奴等の目を盗んで外に天理を出して千雪ちゃんのところへいくように促した。 天理は俺のお願いは必ず聞いてくれるし天理を奴等から逃がす口実にもなった 俺が行けるときは一緒に病院へは行くものの天理は病院の庭の隅で待ってた。 誰にも見つからないよう息を潜めて… そんなある日、勉強の時間を終えて天理を迎えに行ったときのことだ。 二人を驚かせようと思って静かにドアを開け隙間から中を覗き見て声をかけようとした… …けれど…できなかった…。 だって天理の胸に顔を埋め声を殺して泣く千雪ちゃんの姿が見えたから。 そんな千雪ちゃんの姿は初めてでどうしていいかわからなくて見てはいけないものをみたような気がして一旦病室から離れた。 少しして戻るともう千雪ちゃんはいつも通りの笑顔でその隣に両手一杯にお菓子を持って困った顔をした天理がいた 「それ。どうしたの?」 「…千雪が…千雪が…くれた…」 「よかったね」 嬉しいのにうまく伝えられなくて天理は困っていたのだ。 俺も嬉しかったんだ。これまで俺以外から何かをもらうことがなかった天理に他の誰でもない千雪ちゃんが自分の好きなお菓子をたくさんくれたことが 俺にとってもお菓子なんて無縁のものだった 祖父がお菓子の類いを与えるのを嫌ったからだ。 それからちゃんとお礼を言ってお菓子を半分持ってあげて帰宅してそっと天理の部屋に隠した。 「摂理は…食べないの?一緒に…食べよ?」 「ううん。それは天理のだよ。だから天理が食べて」 そう言ってチョコレート菓子を天理に開けてあげると恐る恐る口にしてくれた。その時久しぶりに天理が笑顔を見せてくれた 「これ…美味しい…摂理もどうぞ」 そう言って俺の口に突っ込んできたときはビックリしたけどとても嬉しかった 「本当だ。美味しいね」 天理は大切に大切にそれを少しずつ食べた。 辛いときがあったときは少しだけ量も増えたけど… それから暫くして千雪ちゃんが退院して俺たちは元の生活に逆戻り… 俺はたくさんのレッスンに追われ天理は…また大人に…

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