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第58話
着替えてリビングへ向かうとキッチンで忙しくしてる摂理君が目に入る
「摂理君」
「ん?千雪ちゃん…。さっきはごめんね」
「ううん。大丈夫。それより忘れちゃっててごめんね。思い出したよ。あの頃のこと」
「千雪ちゃん…」
「摂理君。久し振り。会いたかった」
摂理君は手を止めてこちら側に体を向けた。その目にはうっすらと膜が出来てた
「千雪ちゃん…千雪ちゃん…」
「んもう…どうしちゃったの?」
「ごめんね…助けらんなくてごめん」
「あはっ!天理くんと同じこと言ってる。やっぱ兄弟だねぇ」
自分より体格のいい摂理君に抱き付いて背中を擦る。
「覚えててくれてありがとう」
「うん…体平気?」
「平気。俺ね、暗闇とか拘束とか苦手みたい。最近は家で寝るときとかも電気もテレビもつけっぱなしで寝てた。摂理君の言う恐怖はそういうのも含まれる?」
「そうだね。ねぇ。千雪ちゃん」
「ん?」
「俺たちは小さい頃の千雪ちゃんを知ってる。だから甘えていいよ。頑張んなくていいよ」
「ん?頑張ってないよ?大丈夫」
「少しずつでいい。沢山沢山お話ししようね」
「うん」
それから昔話に花も咲いて気付けば夜も更けていた
「ふあぁ…」
「眠くなってきた?」
「ん」
「ここ数日ちゃんと寝れてないんでしょ」
「ん~…寝たと思ったんだけどなぁ…」
「天理と寝る?」
「…三人で…寝たいな…あの日みたいに」
一日だけ入院中に俺の部屋に二人が泊まってくれたことがある。俺の担当のお医者さんが同世代の子と過ごしてみようかって気まぐれで二人を連れてきてくれたのだ。
さっき話しててそのお医者さんが二人のおじいさんだと知った。
「狭くないかな?」
「摂理君のベッド大きかったから大丈夫じゃないの?」
「千雪ちゃんくらいの体格だったらいいかもだけど俺達でかいからなぁ」
「ぎゅーってくっついて寝たい」
「…だってよ。天理」
「わかった…いい?摂理」
「うん」
俺を挟んで三人で横になる二人とも両側から俺を抱き締めてくれて俺はあっという間に眠りに落ちた
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