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秘密②

 変な汗をダラダラと垂れ流しながら、まるで的外れな答えを返すコイツ。    高橋......売春だけじゃなく、コスプレまでさせられてるのかよ。  俺も、見た......いじゃなかった、心配過ぎる。  ......何でお前、そんなに金が必要なんだよ。 「水臭いぞ、高橋。  俺だって金はないが、困ってるなら相談くらいしてくれてもいいじゃん。  俺達、友達だろ?」  まるで頼って貰えなかったという事に幾分情けない気持ちになりながら、告げたというのに。  この男、何故かホッとした様子で顔を綻ばせた。   「......何笑ってんの?  俺、まじで心配してんだけど。」  苛立ちながら、聞いた。  すると高橋は、またしても慌てた様子で答えたのだ。 「ごめん、てっきり全部知られたと思ったのに、違ってたから安心しちゃって。  ......良かったぁ、僕がインキュバスだって、鈴木くんにバレてなくて」  ......は?  何を言ってんだ、コイツ。  てか何だ、そのインキュバスってのは。  意味が分からず、今度は俺の方が首を傾げる。  ぁ、ちなみに俺が鈴木です。  以後、よろしく。  すると彼は、またしてもしまったとでも言いたげに大層慌てた様子で手足をブンブンと振り回しながら、言ったのだ。 「あっ!ち、違うっ!  僕は、ニンゲン......だよ?」  当たり前だ。何を、今更......。  心底呆れ、吹き出した俺の眼前で。  動揺しまくったせいか彼は本来の姿である、灰色の角と、紫がかった大きな翼を持つ、インキュバスへと突然|変化《へんげ》した。 「「うぁぁぁぁぁあっ!?」」  二人、声を揃えての大絶叫。 「どうした、何かあったのかっ!?」  何事かと、隣室の男が駆けてきて、ドアをバン!と開けた。  でも俺は咄嗟の判断で高橋をクローゼットに押し込め、答えた。 「すまん......Gが現れた。  もう、退治済み」  めちゃくちゃ動揺が表情に表れていたせいか、男はその言葉を鵜呑みにし、そんな事で大声出してんじゃねぇよとだけ呆れ顔で言って、自室へと戻って行った。  ふぅ......セーフ。  いや、これセーフなのか?  ......明らかに人ではないヤツが、まだこの部屋には残っているというのに。  恐る恐る、クローゼットのドアを開ける。  すると中からは、ポロポロと大粒の涙を流しながら、どう見ても危険度ゼロの弱っちぃ自称インキュバスとやらが、ふらつく足取りで出てきた。 「おーい、大丈夫か?高橋」  あまりにも情けないその姿に、クククと笑いながら彼の腰に手を添え、支えてやる俺。  すると高橋は、頬を薔薇色に染めて、翼を嬉しそうにパタパタと羽ばたかせ、男相手にこの表現はいかがなモノかと俺も思うが、可憐な笑みを浮かべて言った。 「ん......、大丈夫。  ありがと、僕の事を(かくま)ってくれて」  ......あれ?何この、可愛い生物。  インキュバスって、もしかして天使の事ですか?

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