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秘密③

「どういたしまして。  つってもいまいち俺、今の状況がまだ、理解出来ていないんだけど。  ......これってさ、神経とかも通ってたりすんの?」  困惑しながらも、本当に作り物ではないかの確認の為、軽く尻尾を引っ張った。 「ん......ふぁ......っ!!」  ますます赤くなり、小さく震える高橋。  何、これ......えっろ!!  無意識のうちに、ゴクリと唾を飲み込んだ。 「鈴木くん、そこ触んないで......」  ぇ、フリ?  それは触れっていう、フリですか?  いや、違うな。  ......これは触ったら、ガチで駄目なヤツだろ。  慌てて手を離し、彼と距離を取った。 「......ごめん。やっぱ、本物なんだな」  激しく動揺しながらも、HAHAHAとアメリカンな感じで豪快に笑っておいた。 「......うん、本物だよ」  尻尾を手のひらで隠すみたいにしながら、軽く睨まれた。  ......残念ながら、全然怖くないけど。   「ねぇ、鈴木くん。  ......さっき僕を、クローゼットに隠してくれたってことはさ。  もしかして皆には、この事を内緒にしててくれるつもりなの?」  じっ、と涙目のまま見上げ、俺の指先に指を絡める高橋。  うん、やっぱりクッソ可愛い。  ......そして、エロい。    いつもはどちらかというと幼い印象を受ける彼の、その(なまめ)かしい仕草にドキッとした。 「んー、そうだな。  別に害が無さそうなら、わざわざ言い触らす必要もないし。  それに高橋は、高橋だしな!」  内心ドキドキしながらも、良き友の顔で答えた。 「嬉しい......ありがと、鈴木くん。  これからも、よろしくね」  こうして俺は、インキュバスとは何なのかすらもよく分からないまま、コイツの秘密を共有する事となった。  ......って、ちょっと待てぃっ!  売春の話は、どうなったんだよっ!? 「高橋......俺が見たのはさ、その翼と角じゃない。  ......お前が中年のオッサンと、ラブホに入ってくとこだったんだけど」  すると高橋はまたしても激しく動揺し、しどろもどろになりながら答えた。 「あー......あの人ね。  出逢い系サイトで、昨日知り合ったんだ。  ......だから実は僕も、どんな人かなんてよく知らない」  その言葉を聞き、眉間に深いシワが寄るのを感じた。  なおもオドオドした様子で、高橋は続ける。 「えっと......引かないで聞いて欲しいんだけど。  インキュバスってさ、男の人の......が、エネルギー源なんだよね」 「......は?ごめん、よく聞こえなかった。  もっかい、言って?」  肝心なところが超小声だった為、そう促した。  するとコイツはもはやトマトかってくらい真っ赤になってうつむき、ギュッと拳を握り締めた。 「......インキュバスは、人の精がエネルギー源なんだ。  だから僕は、定期的に男の人から精液を貰わないと、死んじゃうんだよっ!」  自棄糞気味に、そう叫んで。  ......インキュバス高橋はその場に突っ伏し、わっと泣き出した。  って事は、つまり。  ......コイツはあの親父に、金目当てではなく、精液目当てで抱かれてるって事か。 「えっと......それ、ガチな話?」  軽く頭を抱えながらも、再度の確認。  小さくコクンと頷く高橋の姿は、やっぱり無垢で可憐。 「......訳のわからん親父と、二人っきりであんな所に行くの、危なくない?  ......俺で良かったらその係、これからやってあげようか?」  魔が差した、というよりは。  ......ずっと可愛いなって思ってたコイツが、よく知りもしないオッサンに抱かれてるっていう事実が、許せなかった。  ただ、それだけだった。    しかしそんな醜い独占欲に気付く事なく、高橋はキラキラと瞳を輝かせ、俺に抱き付いて言ったのだ。 「嘘......いいの?  嬉しい、すごい助かるっ!  鈴木くん、大好きっ!」  そして俺は、可愛らしく無垢そのものな見た目に反し、淫乱でビッチなこのモンスターに、餌となる精液を与える係を担当する事となった。  何だこの、エロ同人みたいな展開!!  ......でも、ちょっと嬉しい。

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