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無力
苛立って、肘で上体を支えた体勢で、さらに強く蹴り倒そうとした──なのに。
「人間ってさ、起きてるときのほうが軽いんだね」
「っやめ、!」
物凄い勢いで両足を引っ掴まれて、膝を開いたまま、ずるるっと問答無用で兼嗣のほうへ引き摺られる。
なす術もなく身体ごとずり下がり、下半身同士が密着して。
そのまま腰が浮いたのをいいことに、やつは俺のジャージを脱がせにかかってきた。
「っおい、まじ……ッおま、笑えねーってえ……!」
これには焦って、全力で拒む。
ウエストがゴムのジャージは、引っ張るだけで尻の谷間が露になり、双丘が間抜けに外気に触れる。
脚をバタつかせたりして無我夢中で暴れるが、無理やり身につけるよりも、脱がすほうが遥かに簡単そうだった。
「うぁ……っ!」
海老の殻でも剥くように、ずるりと下着ごとジャージが抜かれる。
「これで、むやみに部屋から出られないよね」
「……ってめぇ、」
攻防戦はあっけなく兼嗣に軍配があがり、俺は下半身丸出しで唇を噛んだ。
太ももがスースーして、心細さに拍車をかける。
でもここで恥じらいなんて見せたらそれこそ兼嗣の思うツボな気がして、本当は手繰り寄せたいシーツを、握りしめることで耐える。
「珍しく口ばっかりだね。もっと本気でさ、抵抗しようよ。じゃないとイイのかなって思うよ、俺。単純だから」
「お前……っ、そういう考えが許されるのは二次元だけだからな……!」
「じゃあ何? リアルの場合は他に理由あるの? どのみち許してくれないくせに」
兼嗣は冷ややかな視線のまま、抜きとったジャージと下着をロフトベッドの下へ投げ捨てる。のを、茫然と見届ける。
ばさりと布の塊が落ちる乾いた音がして、湧いてきたのは怒りでも悲しみでもなく。
風船を針で突いたみたいに、気が抜ける。
途方もなく空っぽな、寂寥感。
「……お前さ、なんなの、ほんとに。なんで?」
虚しさに脱力する。
泣きそうなのをこらえて、やつを睨む。
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