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全然わかってない
不穏すぎる台詞に、きっと物凄く不細工に顔をしかめる俺へ、やつは自分のジャージのポケットから薄いピンク色の見たことのない形の容器を数本、取り出して見せる。
その全てが手のひらにすっぽりと収まるくらいの大きさ。
柔らかなプラスチック性であろうそれは、パッと見スポイトのような、痔で有名な注入軟膏と同じような形状をしていた。
「……な、なに、それ……」
「ローション。個包装の」
ああ……、だからか。
通常のスポイトやポンプよりは丸みを帯びた優しいフォルムで、たぶんタンク部分を指で挟んで中の液体を体内に注入するのだろう。
ビジュアル的にどう見ても女向けのローションだ。
そんなの用意していたってことは、ずっとこうなる機会を窺っていたのかな。
だったらちょっと、いや、かなりショックかもしれない。
「……それ、買ったの?」
「これはローションだけど、シロップなんてのもあるんだね。アップルピーチ味やクリームソーダ味とかね、笑える。味なんてないほうがよくない?」
「それは、マンネリ予防とか、フェラとか生々しいのに抵抗ある人にとっては必要なんじゃね……って、おいおいおいおい!」
「俺なら直接、感じたいと思うけどなあ。好きな人の、身体の味って」
「いやいや、まじで……っ、!」
忘れていたわけではないけれど、兼嗣に漂っていたピリピリした空気がだんだん和らいで、少しずつちゃんと会話してくれるようになっていたから、油断してた。
というより、俺にこいつを殴って抑えこめるほどの力はないようだし、もうちんこの扱き合いくらいなら別に許してやってもいいと半ば諦めていた。
でも、これは、
「ちょっ、待て待て、待てって……! この体勢はっ、恥ず……っ、」
まんぐり……いや、この場合はちんぐり返しというべきか。
膝を下から掬われて、ケツと腰が浮く。
男の体重をものともせずに脚を持ちあげ、何も纏っていない下半身を、ぱっかりと開かれる。
自分でもまともに見たことがない場所を、兼嗣に……幼なじみに見られているという状況に、かあっと顔が火照る。
「うわあ……、絶景だ」
「……っ、兼、嗣……っ、いやだ、これ」
「あ、はは……顔、真っ赤だね。苦しいから?」
恥ずかしいからだけど?!
逆さまに身体を折り曲げた体勢は、確かに胃や肺が圧迫されて息苦しい。
でもそれ以上に、兼嗣の目の前に自分の下半身があって、自分ですら知らない玉の裏や、ケツの穴や、割れ目の終着点まで丸見えなんだってことが、どうしようもなく恥ずかしい。
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