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処世術
中心から手足の末端までぶわっと総毛立つ。
尋常じゃない汗が、背中や髪の内側までドッと吹き出す感覚がする。
……心の準備も、何もなかった。
全身の筋肉が引きつり、もがき苦しむのに力が入らない。
意識のある状態で許容できる苦痛を越えている。
肉体が危機にさらされていると、身体の全細胞がものすごい勢いで異常事態を警告していた。
「みーちゃ……っ!」
「あぅ゙……っ、ゔッ……っ──ッ!」
ちゃんと、呼吸しなきゃ。刺激が、ダイレクトすぎる。
本来は麻酔とかいるやつなんじゃないか、これ。
シラフで感じていい痛みじゃなくねえか。
身体は必死で逃れようとするのに、足の指が虚しく、がむしゃらにシーツを引っ掻くだけ。
枕を掴んで上に逃げようと這いずれば、気づいた兼嗣が俺のニの腕を掴んで引きよせる。
「っゔ、んァ、あぁ゙あ……──ッッ!」
窮屈な肉壁を内側から食い破るように、ぐ、とさらに奥まで侵食される。
潰れたような悲鳴が押し出され、見開いたままの目から、なんの前兆もなく涙がボロボロこぼれた。
「は、あぅ゙……う、ッ落ち、つけ……っ、」
「んぁっ、みーちゃん……!」
「逃げ、ねえ……っからぁ……!」
本当は逃げたくて逃げたくて仕方がなかった。
今すぐこいつを突き飛ばして記憶から抹消して、数時間前の自分に戻りたいと思った。
だけどそれよりこの激痛が地獄だった。
とにかく早く終わらせたかった。
──それしか、考えていなかった。
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