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埋まらない溝

「あぁ゙……ッ兼嗣……っ動く、な、たのむ……」  じとりと背中に脂汗が滲む。熱いのか寒いのか分からない。  呼吸もままならない中で、上体をよじって兼嗣に手を伸ばす。  こめかみに生ぬるい涙がつうっと流れた。  兼嗣は押し進んでいた腰を止めて、伸ばした手を優しく掴む。  ただの処世術でしかないそれに、宝物に触れる犬みたいに頬を擦り寄せて。 「みーちゃん、かわいい、全部すき……」 「……そうかよ」 「まだ半分くらいだよ……。確かにすごい窮屈だけど、やっぱり痛い?」 「あ、あぁ……、激痛しかない。俺には無理……っん、んぅッ」  都合の悪いことは聞きたくない子どもみたいだ。  俺の言葉を遮って、口付けられる。  唇の隙間からぬるりと舌が侵入し、柔らかな濡れた粘膜が触れ合う。  そこはまだうっすら血の味がして、鼻腔に充満する鉄の匂いと、自分の精液の雄くささに嫌悪感で呻くが、苦痛と疲弊で脱力しきった身体は、いうことを聞かない。 「ふっ、ん……ッんぅ、は……ぁ、」  口内は甘ったるい鉄の唾液に溢れ、頭の中までぐちゅぐちゅとかき混ぜられている気分になる。  髪を梳く兼嗣の長い指が、汗ばんだ頭皮をくすぐる。  大きな手のひらは耳まで塞がり、轟々と卑猥な音が頭の中で反響した。  ぬめる唇が卑猥に擦れ合う。  下からも、兼嗣の巨大な存在を感じる。

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