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第2話

  桜咲学園はAからEまでの通常クラスと、主に生徒会役員や各委員会の委員長、頭脳明晰な生徒が通う特待枠のSクラス。 そして、明日から大雅も通う事になるFクラスにはややワケありな生徒達が集められていてる。 「大雅」  寮の入り口の前で声を掛けられると、そこには風紀委員長の紺野 静が腕を組んだ姿勢で壁に凭れていた。 「ん?静、こんなとこで何やってんの?まだホールで色々やってんじゃねぇの?」 大雅は先程までとはうって変わって砕けた喋り方になる。 「生徒会長サマのお帰りをお待ち申し上げておりましたよ」 「もう、元、なんだけどね?」   軽い掛け合いをしながらクッと笑い、静は大雅の横に並ぶと扉の鍵の部分にカードを差し込んだ。  静は180cmを超える身長に見合ったしっかりと筋肉の付いた体をしていて、身長の高い大雅よりも更に目線が上である。 「お前んとこの可愛子ちゃん達、解散しても大雅の親衛隊は辞めねえんだと」 「まぁ、そーなりますかね」 「いきなりだからな」 ウィーンと開いた扉をくぐり、エレベーターホールまでのんびりと向かう。 「大雅、お前これからどうすんの?社長にはもう話したのか?」 「うーん。一応一通りは話してあるよ。リコールされる汚名をあと2年の間にどうやって挽回するんだ?ん?ってニヤニヤしながら言われたけどね」 「あー、確かに社長が言いそうなセリフだわ」 「あのヒト、意地悪いんだよね〜」マジ勘弁…と呟きながらエレベーターに乗り込み、カードを通して最上階のボタンを押した。  そんな大雅と静は産まれた時からの幼馴染みで同い年の従兄弟同士だ。 大雅の父、大史は天城コーポレーションの社長で、先代は祖父である治一郎。所謂、創業一族で、静の父親とは社長と秘書の関係。 天城家は議員の輩出や様々な会社を興してきた一族であり、紺野家は昔から天城を支えてきた一族だった。  大雅の母の雅は元々病弱で、大雅を産んだ後は寝たり起きたりを繰り返していた。 優しい母はベッドの上でいつも柔らかく微笑んで大雅の話を聞いてくれていた。 雅が寝込んでしまうと、忙しい父の代わりに側にいてくれたのが静と静の母親であり、雅と双子の姉妹の律だった。 寂しいと思う事もあったが、律の元で静と兄弟のように伸び伸びと幼少時代を過ごす事ができた大雅は恵まれていると言ってもいいだろう。 「そういえば、今度雅さんと一緒にフランスにワインの試飲しに行くってメールきてたな」 「相変わらずだな〜」 大雅はニシシっと笑ってからフゥ〜と溜息をついた。 雅は大雅が小学校の5年生の時に大量の血を吐き倒れた事があった。生死の境をくぐり抜けた雅は、今までの病弱さはどこ行った?とばかりにメキメキと健康になり、今では父親や律と楽しく過ごしている。 「ま、お土産よろしくって言っとかないとね」 ポンと音が鳴って、最上階のフロアに到着した。 エレベーターを降りて2つ目の扉にカードキーを差し込むと、カチャッと音がして鍵が開く。 扉を開き中に入るとリビングとキッチン。奥の扉が寝室でその横が勉強部屋。トイレと風呂も付いた2LDKの広々とした特別な部屋だ。 「相変わらず何も無い部屋な事で…」 お邪魔しますと言いながら静が後ろから入ってくる。 「無駄に広いしね。コッチの部屋なんて初めから使ってないし」 勉強部屋を指差して、掃除がめんどくさいんだよね〜とブチブチ文句を垂れ流す。 「業者はいつ来る?手配したのか?」 「あ、そんだけだから大丈夫」 部屋の入り口に置いてあるダンボール二箱を指差しながら自分はタブレットとノートパソコンを鞄に入れ、 「静ちゃん。運ぶの手伝ってくれるよね?」  コトリと首を傾げ少し困ったように流し目を送ってみた。 ブフっと笑いが漏れる。 「お前、セリフと仕草があってないんだよ」 「あれぇ?これやると結構皆にステキ〜なんて言われるんだけどなぁ」 おかしいなぁと頭を掻きながら、 「まぁ、残りは業者に引き取って貰うように手配してあるし、身軽なもんだよ。それよりもコーヒー買ってくれば良かったなぁ、プリンも食べたい」 腹減った、と呟く大雅に 「これ運んでから食堂行くか?」 静はヒョイとダンボールの箱を持ち上げた。 「そうするかね」 頷きながら部屋を出る大雅の瞳には楽しげな色だけが滲んでいた。

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