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第4話
「大雅、行くぞ」
静に促された大雅は、うーんと唸って明人の手をもう一度掴んで「離してね」
と微笑みながらブレザーを引っ張ってみた。
「っまだ、話は、終わってナイっ!!」
ブレザーを握る手に更に力が入り、若干眉間に皺が寄りそうになった所で
「おい、転入生。生徒会役員の奴ら曰くお前の所為で総会がストップしてるらしいぞ。あれだけの人数長時間放置して大丈夫なのか?」
少し意地悪い顔をしながら静は言い放つ。
「今、静には!話してナイからっ!」
鼻息も荒く明人が静に噛みつくように怒鳴った。
「オレは年下のお前に呼び捨てにされる謂れはないし、タメ口使われる筋合いもないんだが?」
チラリと切れ長の目を眇め明人を見下ろす。
「でもっ!」と食い付く明人に
「明人、悔しいけれど紺野風紀委員長の言う通りです。これ以上皆を待たせるのは…よくありません。また後でにしましょう?今は総会に戻るのが先決です」
克哉が大雅の手から明人の手を引き離し、そのまま手を引いて行こうとする。
「大雅っ!総会終わったらっ!学食のカフェスペースで待ってるからっっ!ちゃんと説明……「ほら明人、行きますよ」
引き摺られるようにしてホールに戻っていく。庶務の嵯峨根は泣きそうな顔でペコリと深く頭を下げ、皆の後を小走りで着いていった。
静寂が戻り、なんだかなぁという気持ちで見送る2人。
「……この皺〜っっ!あの短時間でマジかよ…」
大雅は明人に握り締められていたブレザーの裾を見て諦めたように溜息を吐いた。両サイド皺々でなんか…テラッと光っている。
「飴?かなんか…かな?」うぇ〜っ最悪…と顔を顰めバサッと脱いだブレザーを静が持っているダンボールの上に放り投げた。
「相変わらず落ち着きも何もあったもんじゃないね…」
「特に奴らが甘やかすからな…高校生には思えない幼さだが…」
「人の話聞かな過ぎて笑えてくんだけど」
マジで…と溜息混じりに乾いた笑いが込み上げた。
「理事長から、甥っ子は海外育ちで世間知らずだからよろしくって言われててもさ〜あのままだとかわいそうな事になりそうだと思ってなんとかしようと接してきたけど…」
「散々気を使ってあいつにも彼奴らにも色々やってきたじゃねえか。でも手を振り払ったのはあいつらだ。もうこれ以上お前が手を差し延べる必要もないだろ」
「そうなんだけどねぇ」
ん〜っと伸びをして大きく息を吸い込み、はぁ…と吐き出す。
「まぁ、なるようになるか〜」
再びF寮に向かって歩き出した。
F寮に着くと扉の横についているインターフォンを鳴らして寮監を呼ぶ。
『あ、大雅〜?ちょっと待ってね〜』と軽い返事。
相変わらずだなぁと思っていると、ウィーンと扉が開いた。
「大雅久しぶり。早かったね。引越しは夕方くらいになるって言ってなかったっけ〜?」
軽い口調で話しかけてくるのは寮監の清水 竜星。桜咲学園のFクラスの卒業生で大雅が中等部で生徒会長をやっていた時の高等部の問題児だった。
身長173cmのやや小柄だがスラリとした体躯に常に悪巧みを考えていそうな猫のような瞳。
唇は軽薄そうに弧を描いている。
華奢に見えるがしっかりと筋肉はついており、組み敷こうと挑んでも逆に組み敷かれるという完全なるバリタチの男だった。
「静もこの間ぶりだね、相変わらずイイ男だね〜」
舐めるような視線を静に向けてくる。
「流星さん毎度勘弁して。俺ノーマルだから。」
「静みたいにガタイの良い男を鳴かすの、好きなんだよねぇ」
猫のような目を細めてニヤリと笑いながら尻を下から上になぞってくる。
「流星さんっ!」
ダンボールを持っている静は顔を青くしてゾゾっと震えることしかできなかった。
「まぁ、時間はまだあるか…。」
静の尻から手を離す際穴の付近でグッと力を入れてくるあたり抜かりがない。
「とりあえず、先に部屋に案内するね」
流星はクルリと背を向けて先を歩き出す。
「静、大丈夫?」
「っっ…。なんとか……」
ガンバレ。
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