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第8話
大雅、静、風紀委員の三人で急いでカフェテリアに向かう。
「濱島先輩は?」
「副委員長は先に現場向かうから自分に紺野委員長呼んでこいって…」
「…なら、まだ乱闘にはなってないな」
カフェテリアに近づくにつれて喧騒が大きくなっていき、ザワザワと入り口付近に人が集まっていた。
「すまない、通してもらえるか?」
落ち着いたよく通る声で静が人垣を割る。
その先でギャーギャーと言い争っている声がする。
「アンタのせいで大雅様が会長降りる事になったんじゃないっ!!」
「なんで?オレ何もしてないよ?」
「大雅様にまとわりついて!アンタなんか相手にされてないくせにっ!」
「大雅とオレは友達だっ!」
「大雅様を呼び捨てにするなんて!」
ギャーギャーと明人と言い争っている大雅の元親衛隊員達。明人を庇うように生徒会役員達が前に立っているので、明人はその背を盾にして言い返している。
風紀副委員長の濱島が取っ組み合いにならないように「お互いに落ち着けっ!」と大きな体を割り込ませて抑えている。
「…カオスだねぇ」
これまた面倒な事になってるじゃん、と現実逃避しかけた時
「大雅は!お前らの事がウザくなって会長降りるって話になったんだろっ!人のせいにすんなよっ!」
「なっっ!?」
ザワっと一際大きく響めきが起こり、親衛隊員達が顔を青くした瞬間、克哉達生徒会役員も焦ったような顔で明人に振り向いた。
一瞬の沈黙の後
親衛隊の先頭に立っていた生徒が声を震わせて問いかけた。
「…一体誰がそんな事を言っているのですか?」
「誰って克哉達が皆そう言ってるって「明人っ!」
言葉を遮るように克哉が口を挟む。
シン…と静まりかえったカフェテリア内でクスッと不謹慎にも笑う声が聞こえた。
皆が笑う声のした方を向くと今日リコールされたばかりの元生徒会長が立っていた。
「あぁ、ごめんね」
口元に手を当て咳払いをし、込み上げてくる笑いを抑える。
「大雅っ!!」
明人が飛び出して大雅に抱きつこうと手を広げたが、静と風紀委員に阻まれた。
フヌーっと顔を赤くしてジタバタしている転入生と青い顔のまま下を向く親衛隊員達。
対象的にバツが悪そうに目を逸らす生徒会役員達。興味深々のギャラリー達。
何だかなぁと思っていると
「アナタ達!何をやっているんですか!」
サッと親衛隊員達の前に隊長の実里が立った。
「実里様…」
「こんな騒ぎを起こして!大雅様にご迷惑をお掛けするだけですよ!」
「でっでも、隊長!この転入生の…「大雅様は一言でもそのような事言われましたか?」
厳しい目で親衛隊員達を見つめる。
「噂を真に受けたり思い付きだけで問題行動を起こすなんて、大雅様はそんな事望んでいません!」
親衛隊員達は目をウロウロさせて、下を向く。
「大雅様、最後までお手数をお掛けする事になってしまって申し訳ございません。
静様、この場は私がこの子達に言って聞かせてから聴取します。少しお時間頂けますでしょうか」
「野宮先輩がそう言うなら、そちらはお任せします。濱島先輩、転入生を連れて指導室で事情聴取お願いします」
「了解した。行くぞ」
「えっ!オレ!まだ大雅と…!」
ギャーギャー喚く明人をヒョイと担いで、濱島は去っていく。
「皆も解散しろ。…大雅も行くぞ」
「……オレ、何もできなかったんだけど」
静にだけ聞こえるくらいの呟きを漏らす。
親衛隊員達のすすり泣くような声が聞こえ、実里が皆を別室へと誘導し始めた。
その後ろ姿に大雅が口を開く。
「…皆、僕のせいで嫌な思いさせてごめんね。さっきの話は全くの嘘だから。僕自身の力不足が原因だから。君達は僕をきちんと支えてくれていたよ」
「大雅様…!」
「すみませんでした…」
隊員達から謝罪の言葉が次々と出てくる。
大雅はゆっくりとした動作で首を振り
「全ては僕の責任。説明不足だった事も申し訳ないと思っている。きちんと僕の口から説明するべきだったね」
「いえ、我々がもっとしっかりしなければいけなかったのです」
「実里先輩は真面目だね。そんな所も可愛いんだけどね。でも無理しないで。皆もごめんね」
目を伏せ申し訳なさそうに微笑み、頭を下げた。
「大雅様っ!頭を上げてください!私達は大丈夫ですから。大雅様はご自分のなさるべき事をされて下さい」
実里は顔を赤く染めながらそう言うと、ペコリと皆でお辞儀をし再度親衛隊員達とカフェテリアを後にした。
皆が出て行き周りも平常を取り戻し始める。
その場に残っていた生徒会役員達も気まづい顔をしながら引き上げて行った。
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