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第9話
「…天城会長」
庶務の嵯峨根が声をかけてきた。
「嵯峨根君、僕はもう会長じゃないよ」
「本当に申し訳ありません」
「君が謝ってしまうとそちら側に責任があると思われてしまうよ?」
「いいんです。こんな事になってしまって、本当に責任があるのは私達の方なのですから。会長は正しい方向へ導いてくれようとしていたのに…」
「嵯峨根君…」
「本当に、辞めるべきなのは自分た…「嵯峨根、それくらいにしておけ」
「静…」
「これ以上言うと、また変な噂が立つ」
嵯峨根がハッと周りを見回すと残っていた生徒達が興味深々に周囲を囲い始めていた。
「嵯峨根君、君がどう言おうと今回の件はもう決定事項だから。これからの活躍、期待してる」
ニコリと笑ってポンと肩を叩き
「じゃ」
と静と共に入り口へ向かう。
嵯峨根はギュッと唇を噛みしめ、叩かれた肩に名残惜しそうに手を乗せ二人が出て行くまでずっと頭を下げ続けていた。
「…じゃあ、オレこのまま指導室行くから。また事後報告兼ねて連絡入れる」
「オッケー。じゃあね」
手を振り静を見送って窓の外を眺める。
授業も総会も全て終わったので部活に向かう生徒や帰宅する生徒で玄関付近は賑やかだった。
とりあえず連絡待ちかな…と大雅は寮に戻る事にした。
F寮に向かっていると方々から声を掛けられる。
「会長」という敬称はまだ取れる事なく挨拶をしてくる生徒達に、まぁまだ仕方ないか…と和かに返事をしながらS寮を通り過ぎ一般寮を半分程越える頃には人も疎らになっていった。
S寮を通り過ぎて行く大雅の背中を皆が潤んだ目で見ていたが、大雅本人は全く気にする事も無かった。
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