F寮に到着し入り口まで来ると、生徒達がなんでこんなとこに会長が？と驚愕の顔で固まっている。 「こんにちは」 キレイな笑顔を作って挨拶をし、固まっている生徒達の間を通り抜けてキーで鍵を開けて中に入った。 後に残った生徒達は顔を見合わせて 「え！？どういう事！？」と大きな叫び声を上げていた。 　寮内でも同じような状況になっており情報を持っている生徒に人集りができて、上へ下へととんでもない騒ぎになっていた。 　そんな事は我関せずの大雅はエレベーターで3階まで上がり、角の自分の部屋の前まで歩いてきていた。 「勝手に入ってくんなって、ほら帰れ」 ガチャっと隣の部屋の扉が開くと小柄な男が押し出されてきた。 「なんで？いいじゃん。ケータ君がスペア貸してくれたんだよ？」 「チッ。…ケータが、だろ？オレは許可してない。勝手に入ってこられるの不愉快」 「だって、こうでもしないと万里はボクの事相手にもしてくんないじゃん！」 「……どーゆー事？お前、ケータと付き合ってんじゃないの？」 「そんなのケータが勝手に言ってるだけだし。ボクは万里の事がスキなのっ！ケータなんて万里の金魚のフンじゃんっ」 「……2度と顔見せんな」 バタンっと扉が閉まり追い出された男が 「ちょっと〜！」と言いながら扉をバンバン叩いている。 「開けてよ〜万里〜！！」 大声で叫びながら扉に殴る蹴るを繰り返している。 ふと顔を上げた男と大雅の目が合い 「えっ！？なんで会長が？？」 と言った瞬間再度ガチャっと扉が開き 「うるせーから早く下おりろっ」と首根っこを掴んでエレベーターの方に引き摺っていった。 その状況を唖然と見ていると、けだるそうに歩きながら万里が部屋の前まで戻ってくる。 「あれ？…カイチョーサマじゃん。こんなトコで何してんの？てか、うるさくしてごめんネ」 万里は髪をかき上げてから腕組みをした。 「あ、今日からこの部屋に入ることになったんだ」 角部屋を親指で指して説明する。 「あーそーなんだ。って、なんでこの部屋？カイチョーサマS寮の住人じゃん。ナンデ？なんか追い出されるような事やらかしたん？」 軽い口調で話す万里の声のトーンがなんだか心地良い。 気軽に、だけどちゃんと心配してくれてるのが伝わってくる。 「あ、知らないヤローからいきなり聞かれても困るか、ごめんネ。オレ隣の部屋。天野 万里。ヨロシク」 指輪をしたキレイな手を差し出して握手を求められる。 「天城 大雅。会長職は今日で退かれたから、もう会長じゃないんだ。ヨロシク」 ギュッと握手をする。冷やりとした手。 「え？そうなの？？ナンデ？」 と話始めた時に ブーッブーッと携帯のバイブが鳴った。 「あ、オレだ。ごめんね、カイチョーサマ」 またネ、と言うと携帯に出ながらキーを刺し部屋に入って行った。 「……隣とか…運命？」 隣の部屋の扉を見つめながら呟くと、嬉しさを抑えきれないというようにニヤつく口元を手で覆った。