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第14話

    「タイガ」    自分の名前がこんなに大切に思えるなんて。 ただ、呼び捨てにされただけなのに耳が熱くなる。 「んじゃ、オレの事も万里って呼び捨てしてネー」 え?呼び捨てしていいんだね? ヤッタ。 「隣だしさー、仲良くしようネ。何か困った事あったら部屋来てくれてもいいし。」 え?仲良くしてくれるの? マジで?部屋行っていいの?嬉しいんだけど。 「タイガって、ご飯自炊するヒトー?」 目の前であんなに会いたかった万里が自分の名前を呼んで気軽に話してくれてる。コレ夢じゃないよな? 「オーイ」 ひらひらと目の前で手を振られて、自分の思考に入り込んでしまっていた大雅はハッと意識を万里に戻した。 「あ、ゴメンゴメン。万里…」 万里と呼び捨てにした瞬間、ボッと熱が上がった気がした。 コホン。と咳をして気を取り直す。 「万里、は、オレと仲良くしてくれるの?」 「ん?するする。オモロイ人好きだしねー」 ドクンと心臓が大きくなった。顔が赤くなってる気がする。 「ん、じゃあ、宜しくお願いします」 ペコリと頭を下げて、赤さを誤魔化す。 「うん。そんで、自炊とかすんの?って話ー」 万里は開いた扉に腕を組みながら凭れている。 そんな姿もすごくサマになっている。 「あぁ、基本何も出来ない」 「ん?できない?」 「うん。出来ない」 「しないんじゃなくて、できない?」 「うん。出来ない」 ちょっと恥ずかしくなってきた。 「そっかー、まぁ、そんな感じって言ったらそんな感じだよネ」 「……」 「なんてーの?ほら、あのお付きの人とかがさー何でもやってくれちゃう感じデショ?」 「……」 「洗濯とかもさー、パンツも靴下も全部クリーニング派です。みたいな?」 ドコの王族だよーって楽しそうな万里。 「……洗濯くらいは出来る。ランドリーに放り込みに行くだけだし…」 大雅は恥ずかしくなって、ちょっぴり涙目になってしまった。 「あー、ゴメンゴメン。タイガが意外とポンコツでオモロかったから、ちょっとチョーシ乗りました」 ゴメンね、と手を合わせて首を傾げる万里。 それを恨めしそうに見ていると、 「ブフッ。そんな顔もするんだ」 万里は楽しそうに笑った。 大雅もつられて一緒に笑った。 やっぱり好きだと思った。 万里とこんなやりとりができる日が来るなんて、生まれて初めて神に感謝してもいいかな?と思った。

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