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第16話
「あ、いきなりすみません。オレ万里と同室の茂木 圭太って言います」
部屋に入って来た男は驚きながらも自分から名乗った。
「あ、天城 大雅です。隣の部屋に入る事になりましたので、宜しくお願いします」
ソファから立ち上がり、軽くお辞儀をする。
「おう、ケータ。オレ、カイチョーサマと仲良しになっちったゼ」
万里がテヘッと可愛く笑ってVサインをした。
「万里、帰ったら部屋に会長様がいるとかどんなドッキリよ。ビックリするからね」
全く、と圭太が万里の頭をグリグリする。
万里はイテェし…とブツブツ文句を言っていた。
仲が良いんだな、とチリッと胸が痛む。
「天城会長が入寮するって噂はホントだったんですね。今、寮内スゴい事になってますよ」
そんなに?と不思議に思う。
「…僕はもう会長じゃないからねS寮にはいられない。でもここに入るのは皆の迷惑になるかもしれないけど、楽しみにもしていたんだ」
「うーん。迷惑なんてこちらがかける事があっても天城会長からかけられるなんて事はないと思いますけどね」
ハハハと笑うと
「あ、すみません、座って下さい」
と促された。
圭太は冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、そのまま飲み、万里の隣に座る。
自然に隣に座る圭太が羨ましい。
「ケータ、スゴい事になってるってどーゆー事?」
「ん?天下の会長様が下界以下の地獄に堕天されたーっとか、ココにはただの偵察で来ててF寮潰しに来たんだ!とか、本人な訳がないアレは影武者だ、とか。思ってたより美人でビビったとか、カッコイイとかやっぱり好きとか…」
後半意味がわからないのだが…と面食らった状態で固まってしまった。
「アハハー。タイガ人気モンじゃん」
「何で|こんな所《F寮》に?って言うのが一番多かったかな。ほら、総会とかなんてFの奴ら行かないし」
確かに、総会とか集会とかFクラスの人の参加はいつも数人だけだったな…と思い返す。
「確かにー。そーいやオレも何でタイガがカイチョー辞めたのか知らないワ」
「お前は噂とかにも疎いからなぁ」
「…茂木君は、総会とかそういうの参加するタイプなのかな?」
大雅は何となく色々分かっていそうな圭太に話しかけた。
「あー、オレ一応Fクラスの委員長なんです。ちゃんと情報握っておかないと、Fの奴らすぐに暴走するんで」
Fクラスにもまともな人がいる事に少し驚く。
「ケータはさー、爽やか真面目ヤローっぽく見せかけて近づいてきて人の腹探るの得意だから気をつけてネ」
「人聞きの悪い事言うなよ」
「ホントの事じゃん。あ、てかアイツ、名前なんだっけ、勝手に部屋入ってきやがったぞ。あんなんにスペア渡すなよ」
あの時の小柄な男の事を思い出したのか急に怒り出した。
「あーゴメン。アイツ部屋にスマホ忘れたって言うからさ。オレが部屋戻るまでどうしても待てないっていうし、絶対に何も触らない事と万里の部屋は開けんなって約束で渡したんだ。どっちにしてもあの時間だったら万里まだ居ないと思ってたし」
申し訳なさそうに圭太がペットボトルの蓋をクルクル回している。
「ちょっと早めに終わったからさー、寝れると思って寝てたら、いきなりベット入ってきやがった。チンコ握ってくるしマジむかついたから頭突きくらわせて追い出しといた」
フンって鼻息も荒くイライラして親指の爪を噛んでいる。
「本当にごめん。スペアすぐに取り上げといたから、もう誰も勝手に入ってこさせないよ。軽率な行動でした」
ペコリと頭を下げている。
「何よりもオレ、アイツキライだわ。ケータ趣味悪すぎワロタ」
フンとそっぽ向く。
「マジごめん。今度奢る!」
「…闘将軒のラーメン大盛り」
チラリと横目で圭太を見て、溜息混じりにそう答えた。
「餃子も付けます!ホントごめんな」
目の前で繰り広げられるやり取りに驚きながらも、何よりも万里のチ○コを握ったと言うあの男に殺意が湧いた。
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