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第17話
万里と圭太の話がポンポン目の前で飛んでいて、黙って聴いてるしかなかったが、本当に仲がいいんだなって事がわかった。
お互いに自然体で気を許してる感じがする。
自分と静の関係に近いのかな…?と思っていると
「そういえば、天城会長は晩ご飯とかどうするんですか?」
と圭太が聞いてくる。
「あぁ、どうしようかな。食堂って何時から何時までだったっけ?っていうか、僕は会長じゃなくなったので、呼び捨てにしてもらって構わないよ?」
「え?呼び捨て!?ムリですって!!」
顔の前でブンブンと手を振る。
「うーん。でも会長じゃないのに、会長って呼ばれるのはちょっとね…」
悲しそうな顔を作ってみた。
「っっ!!」
「ケータもタイガって呼ばせて貰ったらいーじゃん?」
万里が軽い調子でぶっ込んでくる。
「バッ!!そんな恐れ多くてムリムリ!!」
「僕は取って食いはしないんだけどね…」
「ねー。タイガもケータの事ケータって呼んだらいいし。それでオッケーじゃない?」
「オッケーじゃねー!!」
圭太はガックリと肩を落とした。
万里にとって圭太という存在はやっぱり単に仲がいいだけじゃないような気がして、ここは自分もしっかり仲良くなっておくべきだな。と考えた。
「まぁ、いきなり名前の呼び捨てはお互いハードルが高いという事で、僕は圭太君と呼ぶよ」
「あ、はい。えーと。天城さ…ん?」
「大雅君でもいいんだよ?」
「えっと…」
「大雅君」
さっきも万里と同じような会話したな、と思いながら楽しくなってきた。
「た、たい、大雅く…ん」
「よろしく圭太君」
ニッコリ笑って握手を求めた。
「よ、よろしくお願いします」
ちょっと泣きそうな圭太の顔をしっかり見つめてガッシリ握手した。うん。仲良くなれそうだ。
「あ、タイガさー晩メシ何も決めてないなら、簡単なんでよかったらウチで食ってく?」
万里が嬉しい提案をしてくれた。
「え?いいの?」
そんなの、一緒に食べたい!の一択です。
「いいよー。えーと、今日はショーガ焼きと無限ピーマンとミソ汁の予定だけど、食えないモンある?」
「好き嫌いは特に何もないから大丈夫だけど、無限ピーマンってどんな物かわからないんだけど…」
「えー?タイガ無限ピーマン知らないのー?カンタンでチョーうまいから!マジビビるよー」
ヨイショっとソファから立ち上がり、キッチンへ向かうと椅子に掛けてあったサロンを腰に巻いた。
「え!?万里が作るの??」
「そーだよー。趣味、料理って言ってもカゴンではない」
フフンッとわざとらしく笑って、リングとブレスレットを外して手を洗っている。
「あの外見で意外でしょう?アイツなんでも作れるんで、リクエストし放題ですよ」
と圭太が眉唾物な情報をくれる。
「何でもってすごいよね!」
本気でスゴいと思っていると
「あの外見ってのは余計ですー。でも、リクエストくれたら何でも作るから言ってネー」
手早く米を研いでセットし、調理を進めていく。
ただ、料理をしているだけなのに、サロンに巻かれた細い腰が妙に色っぽく見えた。
万里が晩ご飯の支度を始めた頃、圭太はちょっと調べたい事あるんで、と自分の部屋に入って行った。
大雅はその間一人で万里の調理風景をじっと見つめていた。
あんなにダルそうに歩いたりしてたのに、今はテキパキと流れるような動作で料理が作られていく。
飽きない。ずっと見ていられる。
たまに万里が
「あんまし見ないでよー。手元狂うジャン」とか
「ショーガ焼きってさー醤油辛いよりもチョット甘めの方が好きなんだよねー」とか
じっと見てるだけの大雅に話しかけてくれた。
それに対してちゃんと返事できていたかは定かではない。
やっぱりキレイだな、スゴい!あんなに早く包丁で切れるなんて!
とキャベツの千切りをしている万里に見惚れていた。
どれくらい時間が経ったのか…
「2人とも、流星サンから連絡来てるよ」
と圭太がタブレット片手に自分の部屋から出て来た。
「なんて?」
「20時、第一集合。全員参加。やむを得ない場合除くが理由を述べよ。不参加者には罰を与える。以上」
「ふーん。…これって、タイガ関係?」
「うん。多分そうだと思う。昼に一回来た時に挨拶しろって言ってたから」
「20時か。まだ余裕あるから、ゆっくりメシ食えるな。ケータ、手伝えー!」
「了解。オレ、メシよそうわ。大雅君、どれくらい食べれる人?」
小気味いいテンポで話が進む。
「あ、普通くらいで…」
と、圭太の方を見ると丼にご飯を山盛りよそっていた。唖然として見ていると
「あ、コレ万里の分だから。大雅君の分じゃないから安心して。万里、ご飯星人だから」
「ご飯星人…?」
普段あまり出てこないような言葉が沢山出てきて、不思議な感覚に陥っていると、
「できたから、食べよー!」
ドーンッとテーブルに大皿で生姜焼きが山盛りキャベツと共に出された。
「あとコッチが、ある意味主役の無限サンです」
知らない料理だが、美味しそうだ。
「ハイ。では、イタダキマース」
「いただきまーす」
「万里、作ってくれてありがとう。いただきます」
ハーイ。と丼飯片手にモッシャモッシャとキャベツを食べ始める万里。
圭太も生姜焼きをご飯の上に乗せて食べている。
大雅は、まず味噌汁を一口飲んだ。
出汁がきちんと取ってある、上品な味がした。
うん。やっぱり食べられる。
「美味しい…」
「だろー?オレショーガ焼きも得意だから自信アリよ、食べて!」
ワレながらウマイ!と言いながら万里は肉を口に放り込む。
どれを食べても美味しい。
初めて食べた無限ピーマンも、美味しすぎて何回も箸を伸ばしてしまった。
万里が作ったご飯だったら食べれる。
それが嬉しくて、いつも以上に沢山食べた。
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