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第18話

   「じゃ、行きますかー」 もうすぐ20時になるから、と部屋を出た。 結局沢山食べて、話して、片付けて、と万里達の部屋で楽しく過ごしていたら、あっという間に時間になってしまった。 「あー、チョー食い過ぎー。腹パン過ぎー」 と万里はお腹をさすりながらダラダラエレベーターに乗り込んだ。 こうなってくると、料理中と全く違ってやる気の感じられない万里も、だらしないと言うより、幼い子みたいで可愛い印象になってくる。 一階に着き、第一ホールに向かって歩いていると、周りがザワザワ煩くなってきた。 皆からの視線が刺さってくる。 「流星サンから何か言われてんの?」 そんな状態にも関わらず万里が耳元で話しかけてくる。 ドキッとした。 周りもキャッとか、何?とか色々言っている。 「万里、ちょっと注目の的だから…」 圭太が距離感大切に!と万里を諭している。 「フフッ。何にも聞かされてないんだよね。全員集めるから挨拶しろーくらい。流星さんが来るかもわからないんだよね」 「フーン。まぁ、流星サンだからねぇ」 と納得していた。 ホールに入ると、一際騒ついた後、シーンと静かになる。 万里は扉の横の壁に凭れ掛かって、腕を組んだ。 圭太は他の友達を見つけ、じゃ後で。と離れて行く。 少し手持ち無沙汰な感じがしてアウェー感がすごいな、と思って立っていると万里がチョイチョイと自分の横を指差して呼んでくれた。 隣に来いって事かな?と隣に並ぶと、元々自分より少し身長が低い万里が凭れて立っている事で、更に目線が下になっていた。 軽く肩が触れ体温が移る。 あの少年の頃の、あの日の事を思い出す。 繋いだ手が自分と同じくらいに温まって、溶けて一緒になってしまうんじゃないか、 と思ったあの日の事を。 このままでいたい。 ずっと一緒にいたい。 万里を見ながらそんな風に思っていると、 「ちょっと!何で、会長と万里が一緒にいるのっ!?」 静寂を破るやや高めの声が響いた。 「あ?」 と万里が眉を顰めると、昼に万里に追い出されていた男が詰め寄って来た。 「万里〜ヤダ〜アッチ行こ〜よ〜」 腕を絡めて凭れ掛かっていた壁から引き離すように引っ張っている。 「マジうぜー。離れろ」 万里は絡めてきた腕を雑に引き離した。 「万里ぃ〜」 上目使いで彼なりに可愛く見える角度で万里の名前を呼びながら、再度手を絡めようとしていた。 その瞬間、大雅は自分でも無意識に近いスピードでその手を払い落としていた。 「え?」 と皆の注目がまた集まる。 手を払い落とされた彼は唖然としていた。 大雅は払い落とした自分の手を見つめた。 万里は少し驚いた顔をした後。ニヤリと笑った。 この後どうなるの?という皆の視線を遮るようにパンパンっと手を叩く音がした。  「ハイハイ。皆集まってる?」 流星がホールに入ってきてガラリと空気が変わり、先程までのやり取りが有耶無耶になる。 「大雅、コッチ」 流星に呼ばれてホールの前の方に連れて行かれる。 「ハーイ、注目!ってもう注目してるか。もう分かってると思うけど、天城 大雅。今日からF寮で生活する事になったから、仲良くして。」 僕からの説明は以上。っと雑にバトンパスされる。 「天城 大雅です。色々あって、生徒会長は退いたので明日からFクラスに入ります。寮もこちらでお世話になります。勝手が違ってご迷惑をお掛けする事もあるかと思いますが、宜しくお願いします」 簡単に挨拶をして、全体を見渡してニコリと微笑んだ。 F寮の生徒達は、Sや一般の生徒達に比べて個性的という意味で派手だった。 これまで生徒会で活動してきた中でFクラスの生徒達にこれだけ囲まれた事はなかった。 何か用事ができても、全て他の役員達が自分が行くと言って持って行ってしまうので、関わる事が極端に少なかったのだ。 爽快だな。と今までと違う環境が自分にとって良い影響を与えるだろうな、と思った。 「はいはーい。会長に質問!」 と一人の利発そうな生徒が声を上げた。 流星をチラリと見て、頷いたのを確認する。 「うん。何でしょう?」 「会長は、…まぁ色々噂もありましたけど、本当の所なんでリコールされたんすか?」 いきなりズバリと確信に迫る質問で、少し面食らう。 「そうですね…。色々意見の食い違いが多くなってしまって、お互いの方向性が変わってしまったから…ですかね」 「それってやっぱり、お騒がせ転入生が関係してるんすか?」 質問してきた生徒の横にいた男が質問を被せてくる。 「うーん。全く関係ないとは言い切れないと思います。だけどそれだけが問題であったという事はないです」 「転入生を取り合って仲間割れしたってホントっすかー?」 「フフッ。そんな事は間違っても無いですよ」 「転入生が実はヤリチンビッチってホントっすか?」 「会長と副会長、付き合ってるってホントですか?」 「風紀委員長と身体のカンケーってホントっすか?」 「オレと一発ヤロウ!」 「あ、バカかお前」 「オレの方が絶対イイと思う!イイと言わせて見せる!」 「オレの部屋、2階3号室!」 「バッカじゃないの!!大雅サマ!ボクの部屋に来てよね」 …カオス。 どうしようかな、と思っていたら 「タイガ」 扉の横にいた万里がのんびりした口調で大雅を呼んだ。 騒ついていた部屋が少し静かになる。 「もういいんじゃね?部屋戻ろうぜー」 と親指で扉を指差して、ホールから出て行った。 「…じゃあ、皆さん、これから宜しくお願いします」 万里の後ろ姿を見ながらもう一度ニッコリと笑った顔は、先程よりも晴れやかだった。

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