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第21話
明け方少しウトウトしたらスマホのアラームが鳴った。
「あんまり寝れなかった…な」
遠足前の子供かよ…と髪をかき上げベットから起き上がった。
朝の準備をして、ネクタイを絞めた瞬間にスマホが震えた。
『おはよー。起きてる?メシ準備できてるよー』
万里からのモーニングコールならぬモーニングメール。思わず頬が緩んでしまう。
パンッと頬を叩いて引き締めて、万里の部屋に向かった。
ピンポーン
インターホンを鳴らすとすぐに
『おー、どうぞー』
ガチャっと扉が開いて、キラキラシルバー頭の万里が顔を出した。メガネをかけている。
「おはよ。早かったなー」
「あ、おはよっ、ってメガネなんだね。って、早く来すぎた!?出直そうかっ?」
メガネが似合っていて格好よかったのと、迷惑だったかな?と不安になったのとでグダグタになってしまった。
「朝からとばすねー。メール送ってからスグ来たねってコトだから、心配すんなよー」
アハハーと楽しそうに笑ってる。
入ってと、促され部屋に上がる。
昨日お邪魔した時は舞い上がっていたのかそこまで意識して見ていなかったが、自分の部屋とは対照的な暖かさのある部屋だ。
建て付けの家具もあるが、ソファやテーブル、チェスト等の持ち込みの家具の趣味がいい。
同じように食器もスタイリッシュで万里のイメージに合っていた。
「あれ?圭太君は?」
「ケータはギリギリまで寝てるタイプだから、気にしなくていーよ。今朝は和食。おかわりもあるから食べたかったら言えよー」
ご飯、味噌汁、サラダ、卵焼きと焼き魚、ノリと漬物。完全なる和定食。
「おいしそう!いただきます」
「はいどーぞ」
何気ないやり取りが心に染みる。
朝からやっぱり丼飯。
万里を見ると綺麗な箸の持ち方でワシワシご飯を食べている。
「万里って細いのによく食べるよね」
「オレ燃費ワリーのよ。スグ腹減るしさー。ちょっと食わないとすぐ体重落ちるし」
「食べても太らないとか?羨ましがられそうだね」
「っていうじゃん。皆言うんだなーそうやって。うらやましーって。でもさー食わないと痩せてくってけっこー恐怖よ、シカツ問題ってやつ」
軽いノリで話してるけど、何となく含みのある話し方で少し気になる。
「ヒトってさー、何日か食わなくてもまぁまぁ生きて行けんじゃん。ニュースとかでもさー、水だけで何日生きましたとか。でもさーオレはムリな訳よ。一日食わなかったらもーフラフラよ」
ハハッと笑っているが眼鏡越しの瞳は笑っていなくて、どこか遠くを見ている気がした。
「万里?」
「あー、ごめん。んで何が言いたいかというとーえーと、腹が減るからたくさん食うじゃん。自分で作った方が好きなモンたくさん食えるんじゃね?ってことで、趣味料理になりましたー」
朝っぱらから語らせんなよーと言いながら無理矢理な話の終わらせ方をしたので、何かあったんだろうと思ったが、今は詮索するべきじゃないな、と思いそこは聞き流した。
「朝からこれだけ作るの大変じゃない?」
「オレ趣味に全振りタイプ。全く苦にならねーの。人に食わすのもスキだし」
他にも色んな人が万里の手料理食べてきたのか…と思ったら顔も知らない相手に嫉妬心が起こる。
「っても食わせてんのなんて、カーチャンとケータくらいだなー」
さっきの嫉妬心拡散しました!
「これからはタイガもだなー」
「え?いいの?」
「なんかほっといたら食わなそーなタイプだからなー。餌付けしとかねーと」
アハハーと楽しそうに笑う。
「餌付け…」
嬉しい。して下さい。
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