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第22話

   朝ご飯を済ませ、鞄を取りに部屋に戻った。 万里達の部屋から戻ると何も無さすぎて寒々しい。 やっぱりソファくらいは必要かな、 朝の光が入っているのにこんな寒々しく感じる部屋には万里は似合わない。 質の良い柔らかめの大きなソファを買おう。 2人が座れるソファ。 そこでネコみたいに2人でくっついて永遠に他愛もない話をしよう。 ……もう部屋に呼ぶつもりでいる自分に自嘲する。 ブーッとスマホが震える。 静からだ。 『おはよう、部屋確保しといたぞ。3階の特別室。カギは後で届ける。無理するなよ』 幼馴染みの従兄弟にはいつも心配かけてて申し訳ない。 『ありがとう。助かる』 返事を送って寝室へ。 タブレットを鞄に入れてふと目に入ったビンを手に取る。 キラリと光るビンの蓋は万里の髪と同じシルバー。 出会ったあの日から会いたいと焦がれていた気持ちが思い切りよく燃え広がってくる。 幼かったあの頃自分の周りは敵だらけで近付いてくる奴は信用出来なかった。 皆オレの後ろを見てる。 後ろにいる天城を見てる。 オレ自身なんて要らないんだ。 近寄ってくる奴はハイエナだ。 甘い汁を吸おうと集ってくる虫ケラだ。 食い散らかされて旨味が無くなるともう必要ないとポイと捨てられるんだ。 そんな毎日だった。 信用できるのは自分と家族と静と律だけ。 心を許すなんて怖くてできない。 友達なんて要らない。 好きな人なんて要らない。 オレを利用するならすれば良い。 踏みにじって越えていけば良い。 逆に利用してやる。 踏みにじって捨ててやる。 心の拠り所なんて物はなかったし、必要ないと思ってた。 あの日、頬っぺたと鼻の頭を真っ赤にした綺麗な髪の君に会うまでは。 純粋な好意を受けてぶっきらぼうな返事をして後悔した記憶。 始めは疑った。 どうせ親切風吹かせて後から恩着せがましく擦り寄ってくるんだろう。と。 どうせ後から貸してやっただろう?と声を掛けて来るんだろう。と。 冷たかった手が触れ合う瞬間までそう思ってた。 ニッコリ綺麗に笑う君を見て、霧が晴れたような気がした。  あの後、君は何も言わずただ隣に座っていた。 話しかけたのは自分。 手を握ったのも自分。 君は何も求めて来ない。 冷たい君の手を温めたいと思ったのは自分。 何かを分け合いたいと自分から思ったのは初めてだったのかもしれない。 思い出の中の君は綺麗で美しい。 今目の前で話して笑っている君は更に美しい。 自分の手の届く距離にいて欲しい。 この腕の中だけで笑っていて欲しい。 このビンの中の消しゴムのように 閉じ込めておく事ができればオレの心は穏やかなままでいられるだろう…。

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