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第24話
「…万里って見た目チャラいでしょ?だから人が沢山寄って来るんですよね。内面知って更に惚れられたりする事も多いんですけど。」
ちょっとだけいいですか?と圭太が少し真剣な顔で話し始めた。
「昔は今と違ってもっと繊細な感じだったんです。あ、オレと万里、幼馴染みなんです。だから昔から知ってるんですけど、アイツも色々あってわざとチャラい感じにしてる所あるんですよね。」
「…そうなんだ」
確かにあの頃の万里は繊細で優しさが滲み出ていた。
「でも根本は変わってなくて、元々スゴイ優しい奴なんですよ。でも、まぁ、ある時から変わっちゃって。
なんでかは、うーん。この学園に入ってるって事は…って事で。すみませんなんか目茶苦茶だ」
頬をポリポリかきながら話す圭太に頷いて先を促す。
「まぁ、変わったと言っても基本優しいのは変わらないんですけど、人と壁を作るようになったというか、自分の内側には入れさせないようになったというか…。で、あのチャラい感じになったんです。ああいう風にしておけば、深く付き合わなくていいって。オレその時万里の事助けてあげられなくて、変わってくの見てるだけになっちゃって…」
試験のあの日から入学式までの間に何かがあったという事なのだろうか。
「でも、昨日大雅君、部屋に来てたじゃないですか。万里が自分から部屋に入れたの、大雅君が初めてなんです」
「え?そうなの?気軽に声掛けてもらえたけど…」
「はい。実際、ああいう感じにしてるんで、部屋とか自由に人が集まってそうに思われるんですけど、本当はそんな事全くなくて。自分のテリトリーには心許した人だけ入れるタイプなんです。…だから昨日は本当に驚いたんですよ」
「……。」
「万里と大雅君の接点なんて無かったはずだし、昨日初めて話して、すぐに部屋に呼んで、食事も一緒に。それって万里が大雅君の事を内側に入れたって事なんです」
「…でもさっきの子が部屋から追い出される所見ちゃったから、騒がしくてごめんって感じで話しかけてくれただけだけど…」
「万里…凄い怒っていたでしょう?」
「…うん。首根っこ捕まえて放り投げてたよ」
「…アレは本当に悪いことしました。普通の人でも嫌な人は多いと思うんですけど、万里は本当にダメなんですよ、他人が部屋に居るの。しかも寝てる時とか無防備な時は特に」
「……」
「だからまだ万里帰ってないと思ってたからアイツにスペア渡して部屋に入るの許しちゃって。申し訳ない事してしまった」
「でも、忘れ物だっけ?どうしても必要だからって、圭太君も嘘つかれてスペア渡したんでしょう?」
「それでも万里の事考えたら何とか回避しなきゃいけなかったんです。ちょっと考えが甘かった…」
「…万里が怒ってたのって、勝手に部屋に入られた事もだと思うけど、あの子圭太君の事…言い難いけどちょっと悪く言ってて、それ聞いてから爆発したって感じだったよ」
「え?」
「だから、万里が怒ってたのって部屋に入られた事よりも、圭太君が悪く言われた事にだと思う」
「そう…なんですか…?」
「うん。確実にそうだと思うよ。だから、なんだろ…圭太君は万里に対して何もできなくて助けられなかった事に負い目を感じてるのかな?責任感?だったら、そういう感情は必要ないんじゃない?」
「え?」
「昨日出会ったばかりのオレが言うのもおかしな話だけど圭太君の事、心から友達だと思ってると思うよ。だって、同部屋じゃない?」
「…それは、幼馴染だからそれくらいは…」
「本当に他人が部屋に居るのがダメなら、この学園だよ?何とでもなるよ。だけど、圭太君と同部屋のままでいいって事はそういう事じゃないかな?」
「…そうなんですかね…」
「うん」
「ハハ…逆に諭されてしまいました。さすが元生徒会長」
「フフッ。腐っても元生徒会長だからね」
はぁ、と圭太は溜息を吐いた。
「すみません、話逸れてしまって」
「うん、大丈夫」
「えっと、オレが言いたかったのは、万里ってテリトリーに入れると凄い構うんです。心の深い所で繋がろうとする。だから手放したり逃げられたりすると、凄くキズが残る。そういうのもう見たくなくて…」
圭太は言葉を選びながら何とか発していく。
「もし、万里が大雅君の事で傷つくような事になったら、オレ大雅君の事許せないと思うんです。万里も…そういうの重いとかキツいって思うなら早めに離れてほしくて…」
「それって、オレが万里に対して裏があって近づいたって思われてる?」
「100%無いとは言い切れないでしょう?」
鋭い。と思った。
《裏》は無い、が、《欲》はある。
「不正解だね。裏はないよ。知り合ったのも偶然だし」
「…。そうなんですよね。あまりに万里が懐いてるから心配になってしまって。すみません。失礼な事沢山言いました」
「色々調べて見た?何か身になる情報ゲットできたかな?」
「すみません」
ハハと圭太が苦笑いで頭を掻いた。
「心配いらないよオレも万里の事大切にしたいと思っているから…傷付ける事は絶対に無いよ安心して」
心から誓う、もう離さない。
万里が離れようとしても離さない。
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