26 / 30
第26話
一触即発になりそうだったが平穏な空気に戻った
SHRが終わり龍臣が席を外す。
2ーFは全員で28人。皆さん自由な感じで各々時間を潰している。
「|2年のFクラス《ココ》はどちらかと言うと大人しいと思いますよ。問題児集団というよりは、うーん、自分達の事をこう言うのも変なんですけど、金持ちお坊ちゃん集団に入りたくなかった奴らの集まりって感じですかね」
圭太がFクラスの説明をしてくれる。
「なかなか手厳しいね」
「あー、Sとか一般の人達の事を変に悪く言うつもりはないんですけど、なんて言うんだろう派閥とか特権階級独特のしきたりとか上下関係とか、しがらみみたいなのすごいでしょう?」
「確かにそう言われるとそうだね。派閥とかの小競り合いは結構あるって風紀も言ってたし。社会の縮図って言われてるよね」
大雅は静が愚痴をこぼしていたのを思い出した。
「学生時代くらいはそういうのに囚われたくないとか、成り上がりの家のヤツとかなんか、一般にいると爪弾きにされて辞めてく奴もいたりして…そういうの嫌な奴らの集まりなんです。このクラスは特にそういう奴が多くて」
「あぁ、何となくわかるかも。素行が悪いからじゃなくて普通に過ごしていたいからFって事か」
なるほど、そう考えるとFクラスの自由さがとても魅力的に思える。
「あと、結構自分で仕事持ってる奴も多いんですよ。公表してない奴がかなり多いんです。仕事の都合で学校来れない事も多いですし」
「Fクラスの出席率の悪さはこれも原因って事?」
「そうですね。一般だと授業免除には申請がいるじゃないですか、実はこれがかなり面倒なんですよね。だけどSとFはそれがいらない。入るならどちらか、でもSには入りたくない。まぁそこは入れない奴が大半ですけど」
「へえ!そうなんだ。そう思うとFクラスって優秀な人材の集まりって事なんだね」
「このクラスに関しては…ですけどね。1年は、まぁちょこちょこ生意気な奴もいますけど、3年は…ちょっと関わりたくない部類の奴もいるんで…」
圭太の顔が曇る。
「風紀の介入は?」
「紺野風紀委員長が目を光らせてくれてはいるんですけど、そういう目を掻い潜るの上手いんですよ。尻尾を掴ませない小賢しさと親の力で…って感じなんで。皆、目をつけられないように自衛するか、誰かの庇護下に入るか、で対処してる感じですね」
「そうか…」
生徒会でも何度も議題に上がるけどなんとなく決定打が見つからなくて先送りになってしまう問題の一つだった。
「まぁ、どっちにしろそういう奴には関わらないようにするのが一番です。Fクラスの寮も棟も腕に自信が無いなら一人で絶対に歩かないってのが暗黙のルールですね」
なんて物騒なんだ…
「庇護下って、親衛隊とかって事?」
「うーん。正直言って親衛隊でも格が下だとダメですね」
「格?」
「そうです。例えば大雅君の親衛隊は大雅君本人もそうですけど隊長の野宮先輩も後ろ盾が大きいので親衛隊全体の格が上なんです。それ以外だと、風紀委員長の所か副会長の所、あとは広報と美化の所くらいですね」
「長い物には巻かれろって感じだね」
ハハッと乾いた笑いになってしまった。
「まぁ、上手くやっていくには…って事ですかね。それが嫌なら徹底して1人にならないようにする。Fの奴らが隔離されててもそいつらが一般の方に絶対に行かないわけじゃないんで、そっちは問題勃発してるみたいですけどね」
「ふむ。まぁそれは、確かにそうだね」
何となく今まで表面上でしか見えていなかった部分の一歩先を見なくてはいけないのかなと思う。
「どっちにしても、Fクラスへようこそ!って事ですね。大雅君には退屈かもしれませんが、これから楽しくやっていきましょう」
フフッとお互いに笑い合う。
「なんだよ、ヤッパ仲良しかよ」
さっきまで寝ていた万里が突っ伏した状態のまま横を向いてニヤついている。
「万里、寝てたんじゃないの?」
「んー?まあ。…タイガもこの辺は1人でいない方がいいよ」
「なんで?よっぽど大丈夫だと思うけど」
「あー……そうですね。今までSでセキュリティも万全だったじゃないですか、あと常に誰かと一緒にいたと思いますし。それがFに来て周りに誰も付いてない、となったらちょっかいかけに来る奴らがいるかもって事です」
「そーいうこと。だからしばらくはオレかケータと一緒にいて」
万里の言葉にドキッと胸が鳴った。
一緒に居ていいんだ…。
「そうですね、万里が一緒だったら間違いないですね。ただ…お互いのファンにやっかみを受けるかもしれないですけど…」
「やっかみ…」
「ほっとけよ、そんなん関わるだけウゼーだけだ」
そう言いながら万里がンーッとダルそうに伸びをした。
ともだちにシェアしよう!